災害時のトイレ

田舎のトイレ事情と防災士活動

益子 さや子
益子 さや子
NPO法人日本防災士会 女性防災推進会議委員

2021/08/19

私の住む茨城県大子町は町の中心部を北から南へ1級河川の久慈川が流れ、初夏は鮎釣り、冬は限られた条件の寒い朝には川底の氷が水面に浮上し流れる「シガ」という珍しい自然現象が見られます。北は福島県・西は栃木県に隣接した山間の町です。

トイレの水洗化で災害時の困りごとが発生

私には子どもの頃からトイレに関するトラブルの記憶が無く「トイレはいつでも使える」との認識で育ちました。停電や断水の影響も無く台風や大雨でも普通に排せつ排尿が出来る環境だった事は凄く恵まれていたと思います。ただ唯一の問題はトイレが外の別棟だった事です。そのため、庭の浸水や横なぐりの雨のせいでトイレへの往復だけで足やズボンの裾がビショビショになってしまう事でした。

そんな訳ですから台風の影響で庭が浸水する事も珍しくなく浸水への対応も慣れたもので浸水翌日、水が引けば自宅周辺には石灰が撒かれ真っ白なんていうのも見慣れた風景でした。数日後に汲み取り業者さんに溜った水と汚物をくみ取ってもらえば、いつも通りにトイレは使えていましたから「災害でトイレが使えない」なんて想像もしませんでした。

しかし今では浄化槽による水洗トイレが普及し、ボットンの和式トイレから水洗の洋式トイレへと生活環境が変化しました。そうした中、「大きな災害ではトイレは使えなくなるもの」という言葉を思い知らされたのが東日本大震災や令和元年台風19号の水害でした。停電や断水で自宅のトイレが使えず水の確保が大変だった事や、1日に何度も道の駅や町の施設まで通った話を何度も聞く度に今後はトイレの困りごとが増える環境へ変わったことを感じました。

災害時のトイレ対応を学ぶことに

防災士としての活動で今も昔も依頼が多いのはDIG(Disaster-Image-Game)やHUG(Hinanzyo-Unei-Game)のワークショップです。以前、ファシリテーターとして研修会に参加した際、避難所のトイレは「ほぼ使用可」又は「1階のみ使用可」とグループ内で判断しゲームが進められていく事に対し「本当に使って良いの?根拠って何だろう」と疑問を感じインターネットで検索してみました。そんな中で災害時のトイレ関連をテーマに活動されていた日本トイレ研究所の存在を知りました。

展示会や研修会にも参加する中で、大きな災害直後のトイレの使用を控える理由や使用開始の目安、備えとしての非常用トイレの種類と特徴などをアドバイス出来るようになりました。
また、災害時トイレ衛生管理講習会の受講やD-TOP(災害時トイレプラン)の認定を頂く過程で、自然災害は地域や日時を選ばないからこそ都会だろうが田舎だろうが関係無く備える事の重要性を感じました。
トイレ対策はとても繊細な部分ですし、女性が関わる事で思春期の少女の生理用品の事や、1人で避難所生活を送る女性たちへの問題検証等と、トイレを通して安心できるプライベート空間づくりの活動の点が線へ、そして面へと繋がる世界も良いと思っています。

地域の女性たちからの関心

では、わが町の災害時トイレ対策はどうなのかを以前、町の担当課に訪ねた事がありました。しかし特に対策として考えていることは無いらしく、水害時の家財品の置き場や、し尿ゴミ回収法についても興味を持って頂く事が出来ませんでした。

しかし地区の団体で防災講座を開催した際、参加者の、特に女性からの反応の良さを感じました。講座の内容としては携帯トイレ・簡易トイレ・仮設トイレ・マンホールトイレの画像を使い、それぞれの違いを説明したり、携帯トイレや簡易トイレの見本を会場内で見てもらったり、災害後トイレに行きたくなるまでの時間を示したグラフや、携帯トイレを使った既存のトイレの使用法と音・臭い・目隠しの対策グッズの紹介などを実施してきました。

発災後にトイレに行きたくなった時間

令和元年台風19号により浸水

行政側に災害時のトイレに関心を持ってもらうことのハードルの高さを感じつつ、説明用の資料を準備して再度担当課へ出向こうと思っていた矢先、令和元年台風19号による河川の氾濫で町役場とし尿処理場・医療機関・商店街一部が浸水被害に見舞われてしまいました。
し尿処理場が被災しましたが近隣自治体の協力で滞りなくし尿処理を行うことができ、今後は新しいし尿処理場へ業務が引き継がれる事になっています。

令和元年台風19号による浸水

今でも、もっと強く、もっと早く行動できなかった事を反省しています。
私自身が災害は地域や日時を選ばないと言う事を軽く見ていたのかも知れません。
今後は行政に対して繰り返し話をしに出向いて行きたいと思います。
また、より多くの防災士に災害時のトイレ対策に関心を持って貰えるように活動していこうと思います。

益子 さや子
益子 さや子
NPO法人日本防災士会 女性防災推進会議委員

防災士の活動の中で「災害時のトイレ」に関しての情報や知識が余りにも乏しかった事に気付き、日本トイレ研究所の会員となり「女子トイレ研究室」への参加やD-TOPを受講。
日本防災士会での「災害時トイレ研修会」を目指し事務局へプッシュをスタート。NPO法人日本トイレ研究所D-TOP認定、日本赤十字社茨城県支部 防災ボランティア地区リーダー登録。

PICK UP合わせて読みたい記事