そのほか

IBDの体験について

吉﨑 彩乃
吉﨑 彩乃
行政書士/国際医療福祉大学 医療マネジメント学科2年

2021/06/03

トイレに振り回された人生

私の人生の半分は、「トイレに振り回された人生」と言っても過言ではありません。

私が炎症性腸疾患(IBD)のひとつである『潰瘍性大腸炎』を発病したのは“13歳”のときでした。中学1年生という一番多感な年頃です。
潰瘍性大腸炎は、本来なら、外敵を攻撃するはずの免疫が、間違えて自分の大腸を攻撃してしまうことで、腸の粘膜に炎症を起こす病気です。
炎症性腸疾患には、もうひとつクローン病という病気がありますが、この2疾患の主な症状が“下痢”なのです。さらに、潰瘍性大腸炎の患者が「改善したいと思う症状」の約9割が“排便”に関わることだという調査結果もあります。それだけ、IBD患者と排便とは、切っても切れない関係ということです。

発病から30年以上が経ち、その間に大腸全摘出および小腸3分の1の摘出手術をしていますが、私の生活から「トイレの悩み」が完全に消えることはありません。

天敵は「回数」と「我慢」

「トイレの悩み」と言っても、大腸全摘出をする前と後では、その悩みの種類は全く異なります。内科的治療をしているときの天敵は「回数」と「我慢」でした。

1日に20~30回下痢をすることもあり、トイレの往復に多くの時間を割いていました。さらに問題なのは、下痢を我慢できないことがあることなのです。私の学生時代のルーティンは、通学時の途中下車と、生徒があまり利用しないトイレを探して、休憩時間に篭ることでした。休憩時間まで我慢ができずに、僅か45分の授業中に、2回も3回もトイレに行きたくなることもありました。

当時の学校は、IBD患者に配慮する環境はなく、健康な人であっても、授業中にトイレに行きにくい空気がありました。1回は勇気を持って「トイレに行っていいですか?」とお願いできるのですが、2回も3回もとなると言いにくく、漏らしてしまうことが何回もありました。
物理的にトイレに行けないという不安だけでなく、心理的に行けないという問題もあるのです。「授業中に誰かがトイレに立っても、周りは特に気にも留めない」という空気があったら、どれだけ救われただろうかと思います。

手術後に新たな天敵出現

大腸全摘出したことで、下痢の回数は5~10回程度に落ち着きましたし、漏らすこともなくなりました。だからといって悩みがなくなったわけではないのです。

外科治療後の新たな天敵は「音」と「臭」です。「えっ?そんなこと?」と思われるかもしれませんが、お腹がすいたときに鳴る音が“雨音”だとしたら、私のお腹の音は“雷”レベル。かなりの爆音です。はっきりした原因は分かりませんが、手術後の癒着や狭窄などが影響しているのではないかと思います。溜まったガスなどが腸内移動するときにけたたましく鳴り響くのですが、これが最終的に排便時に放出されます。放出音も雷レベルなのです。それも、1回や2回では済みません。

最近では、流水音が設置されたトイレが増えましたが、まだ設置されていないトイレもたくさんあります。流水音がなければ水を流してごまかしますが、レバー式だと排便に集中できませんし、水音がしないタイプのトイレではごまかすこともできません。

もうひとつの悩みである「臭」は、腸がなく不消化のまま排便されますので、普通のうんちとは全く異なる臭いを放ちます。トイレ消臭剤は携帯用も含めて多数販売されていますが、どれも匂いがきつく、消臭というよりは、「排便しましたアピール」をしているようなものです。最近では、脱臭機能がついたトイレも増えていますが、これも全てに設置されているわけではありません。
「音」「臭」に加え、利用時間が長くなることから、トイレに並んでいる人が多かったり、洋式トイレの数が少なかったりすると、別のトイレを探すことが頻繁にあります。

トイレの進化に感謝する日々

トイレ環境にストレスを抱えているものの、ここ数年のトイレ環境の整備には心から感謝しているのです。特に、駅のトイレが綺麗になったことで、生活に安心感が生まれました。

私が通っていた学校のトイレはすべて和式でしたし、駅や観光地などのトイレも和式が大半でした。やっとトイレに辿り着いても、安心して用を足すことができないのです。山、海、キャンプ、バーベキューに行くなど論外でしたし、都内でさえも外出を躊躇するくらいでした。

今では、多少の不安は抱えながらも、自分が行きたいと思ったところに行けます。私は昨春から大学に通っていますが、トイレが整備されていなかったら躊躇したかもしれません。実際、高校卒業時にはトイレが不安で大学には進学しませんでした。大袈裟かもしれませんが、トイレが綺麗になっただけで、自分の行動範囲が広がり、人生までもが開けたように思います。

最後に

あくまでも私の体験談ですので、IBDの方全員が同じとは限りません。また、このようなトイレの悩みは、発生頻度の違いがあるだけで、みなさんも似たような経験をしたことがあるのではないでしょうか。IBDに関わらず、他の疾患でもトイレ環境にストレスを抱えている方も多数いるのではないかと思います。

私たちの生活の中に当たり前のように存在し、毎日欠かすことなく、複数回利用する場所であるからこそ、誰にとっても快適な空間であることが大切なのではないでしょうか。トイレに行くことが「楽しい」と思える空間になると良いと思っています。

吉﨑 彩乃
吉﨑 彩乃
行政書士/国際医療福祉大学 医療マネジメント学科2年

2015年に行政書士KiRaRi事務所を開設。トイレと共にある人生だからこそ、トイレに関わっていたいと思い、当研究所の個人会員となる。「人生の後半を医療業界の発展と改善に貢献したい」という思いから、現在は国際医療福祉大学で医療マネジメントを学んでいる。

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