地震や風水害など、日本では自然災害がいつ起こるか分かりませんし、どこの地域で起きても不思議ではありません。わが街は自然災害がめったに起きないんだよね、なんて悠長なことを言っていられる時代ではなくなりました。
今回は、2018年9月6日に北海道で起きた「北海道胆振東部地震」における札幌市でのトイレ事情について、避難所やマンションへのヒアリングを札幌市の協力を得て行いました。前編ではマンション、後編では避難所についてご紹介させていただきます。
北海道胆振東部地震は、北海道胆振地方中東部・深さ37km(暫定値)を震源地とする地震で、マグニチュード 6.7(暫定値)、札幌市内での最大震度は6弱、厚真町で震度7でした。
かなり大きな地震で、その後、発電所の停止により道内全域の停電、いわゆるブラックアウトになりました。
停電すると水が出なくなる?
ここで知っておいてほしいことは、ブラックアウトになるとマンションの水洗トイレの多くは使えなくなるということです。どういうことかと言うと、マンションは水道管からの水を敷地内のポンプ設備等で圧力をかけて各戸に届けている場合が多いため、停電でポンプ設備が停止してしまうと、水を送ることが出来なくなって断水します(図)。ただし、低層階の場合は、水道管からの圧力のみで水を届けることができるので、浄水場や水道管が損傷していなければ水が出る可能性があります。
1階にある共用の蛇口に救われた!
私がヒアリングした札幌市内の2か所のマンションは、いずれも断水しましたがどちらのマンションにも1階にみんなが使える蛇口があったため、水を汲むことができたそうです。これはとても大切なことです。
ただし、その水を各戸に人力で運ぶのは容易でありません。もちろんエレベーターは止まっています。とくにお年寄りや車いす利用者は大変です。飲み水ならまだしも、トイレの水はかなりの水量が必要です。たとえば、節水タイプのトイレだとしても1回あたりの洗浄水量は6リットル程度です。少ない水で流すと、詰まってしまう可能性が高まります。今回は、居住者の有志の男性や子どもが水を運ぶのを手伝ってくれたそうです。
以下は、熊本地震の際のデータですが、「トイレが詰まって使用できなくなった」という方がいます。下水処理に問題がある場合や排水設備に損傷がある場合は、そもそも流すことができません。
東日本大震災のとき、マンションで排水設備が損傷しているにもかかわらず流してしまったことで、汚水が逆流して1階のトイレから溢れた事例もありました。
下図は、建物における排水の仕組みを大雑把に示したものです。
排水管でとくにダメージを受けやすい場所は、建物から地中に入る部分と、敷地内に埋設されている部分、さらには下水道等に接続する部分です。
前述のとおり、2つのマンションともにメインとなる給水か所は1階の給水口でしたが、それ以外としては近隣の公園も活用していました。
繰り返しになりますが、今回は、排水系統や下水処理施設に問題がなかったので、深刻なトイレ問題が起きなかったのだと思います。
マンションの理事長が「水を使用することができない状況下では、携帯トイレを使用することになっていたと思われる」と仰っていたのが印象的です。
停電時におけるマンションでのトイレの教訓とは?
北海道胆振東部地震で得られた停電時におけるマンションでのトイレの教訓は、以下の5つです。
①停電でも水洗トイレは使えなくなる可能性が高い
②1階の使用しやすい場所に水道管から直接つながる共用の蛇口を設けておくとよい(1階に共用トイレがあると、それを利用することができる)
③各戸に水を運ぶ協力体制をつくっておく必要がある
④近隣の給水ポイントを調べておくとよい
⑤水を使用することができない場合は、携帯トイレが必要である
携帯トイレの使い方の動画はこちら(リンク先下部)
(この記事はnote「うんちはすごい!」から転載しています)
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