災害時のトイレ

マンションにおけるトイレの災害対応|災害時の水洗トイレの再開方法について【後編】

日本トイレ研究所
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Japan Toilet Labo.

2020/04/09

前編では、災害時の集合住宅(マンション)におけるトイレ対応について、住民による通水試験を紹介しました。その結果、排水管の大きなトラブルがあるかどうかは確認できますが、漏水の有無まで確認するのは困難であることが分かりました。

では、水洗トイレの使用再開はどのように判断し、行うべきなのでしょうか。

今回は、前編の内容を踏まえて、災害時のトイレ対応として水洗トイレの使用再開方法について検討します。

トイレ対応方法は主に2つ

災害時のトイレ対応について、大きく分けて2つの選択肢があります。

1つ目は「専門業者による確認が済むまで、携帯トイレの使用を継続する」です。

専門業者に排水設備の良否を判断してもらい、問題なければ安心して水洗トイレの利用を再開することが出来ます。しかし、災害時に専門業者がすぐに来てくれるかどうかは分かりませんので、それまで携帯トイレを使用することになります。

携帯トイレの備蓄は、国の計画では最低3日間、推奨7日間となっています。
備蓄数の算定方法についてはこちら 
ただし、実際にどのくらい必要になるかは災害が起きてみないと分かりませんので、集合住宅ごとに話し合うことが必要です。また、使用済みの携帯トイレ*が回収されるまではそれぞれで保管することが必要です。保管場所や保管方法についても事前に決めておいた方がよいです。避難所等の仮設トイレやマンホールトイレを利用することができれば、携帯トイレの使用量を抑えることができます。

(*使用済み携帯トイレの回収および処理方法については、市町村に確認することが必要です。)

2つ目は「初動対応は携帯トイレを使用し、その後、住民による簡易な点検を行い、住民判断で水洗トイレの利用を再開する」です。

携帯トイレを取りつけた後、給水設備と排水設備に被災状況を目視で点検します。たとえば、地盤が隆起したり沈降したりしていないか、液状化でマンホールが浮上していないか、建物と敷地の間に段差が発生していないか、汚水桝の内部が閉塞していないかなど、外観をチェックします。この時点で異常があるにもかかわらず水洗トイレを使用すると、汚水が溢れたり逆流するなどのトラブルにつながります。

目視点検で問題ないことを確認できれば、次のステップとして、バケツ洗浄等で水洗トイレを再開します。ただし、トイレットペーパーは詰まりやすいので流さないようにします。排水設備の異常の兆候に気がついたら、水洗トイレの使用を停止して携帯トイレに切り替える必要があります。

排水は自然流下(勾配を利用して自然な流れに任せる)が基本となるため、専用のカメラ等で確認する方法以外では、流してみないと異常があるかどうか分からないのです。そのため、異常の兆候をいかに早くとらえるかが重要です。

事前のルールづくり、マニュアルの共有は重要

どのようなトイレ対応方法を実施するとしても、安心して利用できるトイレ環境を確保するためには、事前のルールづくりやマニュアルが必要不可欠です。

そのためには、ルールを決めることの重要性を住民全員に理解してもらわなくてはなりません。そしてマンションの管理会社や専門家の協力を得て、給排水設備の現状を把握することが必要です。
それを踏まえ、災害時にだれがどのような手順で点検するのかを示したマニュアルを作成することが望まれます。もちろん、携帯トイレの使用方法を記載することも必要です。災害時の水洗トイレの点検方法や携帯トイレの利用方法を周知するために、防災訓練において実行するのも効果的です。

このように、事前にルールやマニュアルを作成して、非常時に速やかに対応できるように備えておくことが大切です。

集合住宅(マンション)におけるトイレの災害対応まとめ

・携帯トイレの備蓄数は最低3日、できれば7日分

・事前にルールやマニュアルを作成する

・防災訓練で、災害時の水洗トイレの点検や携帯トイレの利用を実践する

後編では、災害時の水洗トイレの再開方法についてご紹介しました。集合住宅にお住いの方は、ぜひ一度、災害時のトイレ対応を見直してみてください。

今回ご紹介した住民による簡易な点検方法については、公益社団法人空気調和・衛生工学会 住宅設備委員会にて発表予定(2020年5月頃)です。※点検方法についての発表内容はこちら
より詳細に災害時のトイレ対応が知りたい方は是非ご一読ください。

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「トイレ」を通して社会をより良い方向へ変えていくことをコンセプトに活動しているNPOです。トイレから、環境、文化、教育、健康について考え、すべての人が安心しトイレを利用でき、共に暮らせる社会づくりを目指します。

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