そのほか

コンビニとの連携による公共トイレの未来|横浜市の取組

日本トイレ研究所
日本トイレ研究所
Japan Toilet Labo.

2023/07/06

はじめに

公共トイレは、住民が安心して外出できるように適正に配置する必要があります。特に、高齢者や障害者、疾患を抱える人は、安心できるトイレがなければ、外出や社会参加を控えてしまいます。積極的に整備を進めている自治体もありますが、維持管理費の課題もあります。トイレには電気、上下水道、清掃、消耗品、点検・修繕などに費用がかかります。そのため、住民が安心して外出や社会参加するための公共トイレは確保しながら、維持管理費を抑えるために様々な工夫をすることが求められています。

このような中で横浜市は、コンビニ大手ローソンの市内店舗の一部を「公共トイレ協力店」とし、店舗のトイレを公共的な位置付けにする検討を始めました。2023年4月から横浜市内の上郷八軒谷戸店とLTF三ッ境店で実証実験を実施しました。

そこで、横浜市とローソンの取り組みを知るために、横浜市役所に取材に伺いました。

ローソン上郷八軒谷戸店/ローソンLTF三ツ境店 横浜市HPより

誰もが気軽に、安心に使えるトイレはまだ足りていない

横浜市には、公衆トイレと公園トイレを合わせて約550か所トイレがあるそうです。それでも、市民から公衆トイレの設置要望が年間で10件程度あります。このことから、横浜市は誰でも気軽に使えるトイレはまだ足りていないのが現状のようです。

公衆トイレは、人目に付きにくい場所にあったり、老朽化している場合が少なくないこともあり、人によってはいいイメージを持っていない人もいます。そのためか、一般的に女性の公衆トイレ利用率は低く、公共トイレの整備を進めても、この課題を改善することは容易でないことが考えられます。ちなみに千代田区が区内34カ所の公衆・公園トイレ34か所について、ある1日の一定時間の利用者を調査したところ、女性利用者は全体の3%でした。(2003年実施)

そこで横浜市は、建物の中にあり、人の目も常にある状態等公衆トイレとは違った特徴のあるコンビニトイレの協力を得ることで、誰でも安心してトイレが利用できることを目指すことにしました。

「公共トイレ協力店」を示すステッカー(トイレの扉と店舗の入り口に貼付する)横浜市HPより

ここが違う、横浜市の取り組み

これまでに横浜市以外の自治体でもコンビニトイレの協力を得る取り組みを実施した事例はありますが、横浜市での実証実験の特徴的な取り組みは次の2つです。

1つ目は、協力してくれるコンビニへの支援方法です。協力するコンビニへの支援はトイレットペーパーなどの現物支給が多いですが、横浜市は、「物品の支援」「清掃への協力」「協力金の支払い」の中から選べるようにしました。

2つ目は、協力店の選定方法です。他の自治体の取り組みでは、店舗のトイレの公共化に協力してくれるところを募集していました。一方で横浜市は、公共トイレが必要なエリアの店舗に依頼をすることにより、市民のニーズに応えるようにしました。

市が実施すべきエリアと民間に協力を得るエリアのゾーニングについても考えられていました。

自治体と企業が力を合わせる

横浜市では実証実験の結果を踏まえて、来年度から本格的な実施を検討しています。

現在は、まちのバリアフリー化も少しずつ進み、高齢者、障害者、乳幼児連れなどが外出しやすくなっているので、トイレ環境もそれに応じて整備する必要があります。

公共トイレの整備に向けて重要な役割を期待されているのが、コンビニなどの商業施設のトイレだと考えます。今後も自治体と民間施設が協力して、誰もが安心して、気兼ねなく使えるトイレ環境が広がる取り組みが増えることを期待しています。

日本トイレ研究所
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「トイレ」を通して社会をより良い方向へ変えていくことをコンセプトに活動しているNPOです。トイレから、環境、文化、教育、健康について考え、すべての人が安心しトイレを利用でき、共に暮らせる社会づくりを目指します。

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