赤ちゃんの便秘はよくあること。でもたかが便秘とほうっておくと、徐々に悪化することもあります。
長年にわたり赤ちゃんや子どもの便秘の治療を行い、著書に『赤ちゃんからはじまる便秘問題』(言叢社)がある、中野美和子先生(神戸学園、さいたま市立病院小児外科/非常勤・元部長)に、便秘になりやすいタイミングや受診の目安をききました。
※この記事では主に1歳未満の場合についてお聞きしています。
1歳~学齢期前までの記事はこちら

――赤ちゃん(1歳未満)から便秘になるよくあるのでしょうか? 年齢ごとに便秘になりやすいタイミングはありますか?
中野先生(以下、敬称略):赤ちゃんの便秘はめずらしいことではありません。時にみられるのが、1か月健診の前後から便秘になるケースです。なかには、生まれた直後から看護師さんが綿棒刺激などをしないと、うんちが出ない子もいます。生まれた直後から便秘の場合は、重大な病気が隠れていないか診察や検査をおこないますが、そういった病気がなくても便秘という子もいます。
やはり多いのは、離乳食開始時期です。5か月頃で離乳食を始めたタイミングで便秘になることが多いですが、開始後しばらくしてなる子や、離乳食が進むにつれ便秘になる子もいます。また、離乳食にあまり関係なく、5~6か月前後という場合もあります。
1歳ぐらいで幼児食になってしばらくしたときや、2歳前後の偏食が始まる頃も、便秘になりやすいタイミングです。
だからといって離乳食や、幼児食を遅らせたりする必要はありません。便秘になるタイミングは色々あり、なるときはなってしまうものです。大切なのは、日ごろから排便があるか、どんなうんちをしているのかをよく見て、チェックしておくことです。
赤ちゃんの時から便秘だからと言ってずっと続くとは限らないし、必ずしも重症というわけではありません。自然によくなる子もいるし、綿棒刺激や浣腸で対処しながら、いつのまにかよくなる子も多くいます。
綿棒刺激は離乳食を始める前まで
――綿棒刺激で気をつけることはありますか?
中野:まず知っておいてほしいのは、綿棒刺激は離乳食を始める前のうんちが柔らかい時期に行う方法だということです。離乳食を開始してうんちに形ができてくると、綿棒刺激で出すことは難しいからです。
その時期の赤ちゃんに、気をつけてやるならまったく問題はありません。
綿棒を持つ位置は赤ちゃんのお尻に入れるほうからみて、3分の1から真ん中あたりです。綿棒につけるのは食用油ならなんでもよいです。
赤ちゃんを仰向けにして、綿棒をしっかり持ち、先端を背中側に向けてそっと入れ、優しく綿棒を回してください。ぶつかったらそれ以上入れないこと、無理に入れようとしないことが気をつけるポイントです。
この時、肛門手前の直腸にうんちやおならがたまっていたら、綿棒を抜くときにすぐに出ます。うんちがたまっていたら、綿棒は入れやすいです。逆に、入れにくいと感じるときは無理に入れてはいけないということです。
綿棒刺激は出口の近くにたまっているうんちを出すものなので、あまりしつこく1度に何回もやるものではありません。綿棒刺激で出にくい場合は、やはり病院に相談していただくのがいいと思います。

――赤ちゃんの便秘で、他に気をつけることはありますか?
中野:赤ちゃんの場合は、うんちが出ないことで本人に症状が出るかどうかにも違いがあります。
数日たまっているだけでも、機嫌が悪くなって泣いたり、おなかがはる、ミルクが飲めない、うんちをしたそうで苦しそうという症状が出ることがあります。そういう場合は、積極的に綿棒刺激をして、それで出なければ浣腸をして出してあげたほうがいいです。
浣腸は1回、2回なら保護者の判断でして良いですが、そういう状態がずっと続くようなら、病院の受診をおすすめします。病気が隠れていないか検査をしたほうがいい場合もあるからです。
症状が出ない子の場合には、うんちが何日も、時には1~2週間も出ないけれど、本人は機嫌が悪くならないし、おなかもはらない、ミルクも飲むという場合もあります。1、2回そういうことがあったというだけなら心配ないですが、その状態がずっと続いているようなら、ぜひ病院を受診してください。
――赤ちゃんの場合、うんちの回数の目安はありますか?
中野: 通常、6か月まではうんちの回数は1日に2~3回から5~6回、多いとミルクを飲むたびに出る子もいます。6か月未満の場合、1日1回の排便は少なめですが、回数だけにこだわらず、量をしっかり出せていれば1回でも大丈夫です。
6か月以上~1歳未満では、正常なうんちの回数は大人と同じ週3回以上と考えています。
月齢にかかわらず、回数に加えて、量やうんちの状態を確認してください。
便秘のうんちは、におい・質感・色が変化
――便秘のときのうんちはどんな状態になるんでしょうか?
中野:赤ちゃんのうんちはあまり臭くないのが通常ですが、うんちがたまっているときは、生臭いような嫌なにおいがしたり、ねっとりした状態になります。色も赤ちゃん特有の黄色から、茶色っぽい色に変化してきます。
ただし、排便の状態や便秘の症状は、ひとりひとりみんな違います。うんちの回数や量、においや色を、保護者がよく見てチェックすることで、変化に気づくことが大切です。
――便秘って、そもそもなぜほうっておいてはダメなんでしょうか?
中野:たとえ本人に何も症状がない場合でも、ずっとうんちをためていると、だんだんと腸内環境の状態は悪くなっていくと考えられます。1歳までに定着した腸内フローラ(腸内細菌叢)はその後、何十年も続き、いったん定着した腸内フローラを変えることは難しいといわれています。赤ちゃんのときにいい腸内フローラを作っておくことは、成長後の腸内環境のためにも大切です。
たとえ便秘であったとしても、浣腸などで毎日出すようにしていくと、うんちのにおいが改善し、腸内環境も良くなってくると考えられます。赤ちゃんの頃から「うんちをためないこと」が良い腸の状態を作るとぜひ覚えておいてください。
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