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気持ち良い排泄を続けるためのちょっとしたヒント【前編】

高橋 競
高橋 競
獨協医科大学公衆衛生学講座/東京大学高齢社会総合研究機構

2021/05/06

人は年をとると、排泄の困りごとが増えます。このたび、排泄の困りごとを抱えている方々、そして将来排泄の困りごとを抱える可能性のある方々(つまり、すべての大人の皆さん)を対象に、気持ち良い排泄を続けるためのちょっとしたヒントをまとめたハンドブックを作成しました(日本トイレ研究所のHPから自由にダウンロードできます → https://www.toilet.or.jp/projects/small-good-things )。

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おしっこが出すぎる方に知っていただきたいこと

あなたは、一日に何回尿がでますか?夜寝ている間はどうですか?昼間8回以上、夜寝ている間に1回以上尿が出ることを頻尿といいます。ある調査では、60歳以上の約7割に頻尿があると言われています。夜の頻尿がひどいと、大切な睡眠が妨げられてしまいますよね。ここでは、頻尿の予防や改善に役立つポイントをお伝えします。

頻尿対策のヒント1:飲み過ぎは頻尿の原因 夕食後は控えめに

1日に必要な飲む水の量は、体重の約2%と言われています。体重50キロの人は1リットルちょっとです。病気や脱水の予防と思って、寝る前に水をたくさん飲んでいませんか?水分摂取はとても大切ですが、飲みすぎは頻尿の原因になります。夕食後の水分摂取は控えめにしましょう。

頻尿対策のヒント2:頻尿や睡眠の妨げの原因 カフェインを控える

コーヒー、紅茶、緑茶を好きな人は多いと思います。でも、これらの飲み物に含まれるカフェインは、頻尿や睡眠の妨げの原因になります。量はほどほどに、夜はカフェインレスにしたり控えたりするようにしましょう。炭酸飲料や栄養ドリンクにもカフェインが含まれているものが多いので要注意です。

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頻尿対策のヒント3:減塩を意識した食生活にする

塩分の取りすぎは、高血圧や血管の病気だけではなく、頻尿の原因にもなります。日本人は、塩分摂取量が多いことが知られています。醤油などの調味料は減塩タイプを選ぶ、麺類のスープは飲み干さない、なるべく薄味にするなど、ぜひ減塩を意識した食生活にしてください。

頻尿対策のヒント4:生活リズムを整えてしっかり眠る

排尿したくなるから眠れないのか、眠れないから排尿したくなるのか、実はまだよくわかっていません。朝起きる時間は遅らせない、朝ご飯をしっかり食べる、日中は体を動かすなど、生活のリズムを整えてみましょう。眠くない時は、無理に寝ようと焦らなくても大丈夫です。ストレスは睡眠の大敵。リラックスをこころがけましょう。

頻尿対策のヒント5:ちょっと我慢してみる

自分の排尿パターンを記録してみましょう。少ない量の尿が何回も出る方は、なるべくまとめて尿を出せるように、尿をしたくなった時ちょっとだけがまんしてみましょう。尿を溜められるようになったり、もれ予防の筋トレになったり、良い効果が期待できます。

頻尿対策のヒント6:医師に相談する

頻尿には、よく効く薬があります。市販のサプリや漢方を試すよりも、効果が確かめられた薬を医師に出してもらう方がよいです。とくに、夜寝ている間に2回以上おしっこに行く人は、昼間の生活に影響がでたり、転倒しやすくなったりします。年のせいとせず、医師に相談してください。

うんちがでない方にしっていただきたいこと

年をとると、男性も女性も便秘が増えます。自然な排便が週に2回以下だったり、毎回スッキリ便がでない人は便秘かもしれません。便秘のある人は、心臓の病気にかかったり、早く亡くなったりするリスクが高いと言われています。今回は、スッキリ便を出すために役立つポイントをお伝えします。

便秘対策のヒント1:バランスよくしっかりと食べる

朝、昼、晩、しっかり食べていますか?食べる量が減ると便も減るので、便秘になりやすくなります。まずは、三食ちゃんと食べましょう。そして、食べもののバランスも大切です。食物繊維を多く含む海藻、穀物、きのこ、野菜などを、少し多めに食べるようにしてみましょう。また、いつものメニューに発酵食品を一品プラスするのもおすすめです。

便秘対策のヒント2:よい排便習慣を身につける

排便をする時間は決まっていますか?時間を決めて排便をすると、その時間に便が出やすい体になっていきます。例えば、朝食の後。便意がなくても、トイレに座るようにしてみましょう。

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便秘対策のヒント3:前かがみのでやすい姿勢をとる

排便しやすい姿勢は、前かがみです。足が床にしっかりついていないと力が入らないので、小柄な方は足台を使うとよいです。和式トイレが身近にある方は、あえて使うようにするのもよいかもしれません。また、いきむ時におなかを手で押さえてあげると、便が出やすくなります。

便秘対策のヒント4:腹筋・足腰を鍛える

腹筋を鍛えると、排便する時に力が入りやすくなります。腹筋運動を1日10回じっくりやってみましょう。見た目はすぐには変わりませんが、続けていると、おなかに力が入りやすくなります。また、トイレに行くことがおっくうになると、排便をがまんするようになってしまいます。毎日よく歩き、きつめのスクワットを1日10回やって、足腰の筋力を保ちましょう。筋肉は、何歳になっても強くすることができます。

便秘対策のヒント5:リラックスする

ゆったりした気持ちになると、便が出やすくなります。物事に追われて、余裕のない生活になっていませんか?とくに便の出やすい朝は、時間にも心にも余裕をもつことを心掛けてみましょう。

便秘対策のヒント6:医師に相談する

便秘がしばらく続くと、自分だけで改善することが難しくなります。そのままにしておくとどんどんひどくなりますので、便秘気味の人は是非医師に相談してみましょう。相談するのが恥ずかしかったり、薬を飲むことに抵抗を感じたりする人もいると思いますが、便秘治療は早い方がよいです。便秘の悪循環を断ち切って、スッキリした毎日を過ごしましょう。

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高橋 競
高橋 競
獨協医科大学公衆衛生学講座/東京大学高齢社会総合研究機構

理学療法士やJICA専門家として国内外におけるリハビリテーション業務に従事した後、東京大学大学院医学系研究科において博士号(保健学)を取得。現在は、障害者や高齢者の排泄障害、フレイル予防、健康長寿のまちづくり等に関する研究に取り組んでいる。

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