そのほか

車椅子インフルエンサー

中嶋涼子
中嶋涼子
車椅子インフルエンサー

2024/01/23

日本トイレ研究所では、11月10日のいいトイレの日に合わせて「日本トイレ大賞」として、トイレ・排泄に関する社会課題への取り組みを表彰しています。

2023年は、「所沢発!地域活性化につながる新しいスタイルの『公衆トイレ』」と「車椅子インフルエンサー」と「『やったことある!』を生かして、誰もが安心できる『トイレ』へ」の3つの取り組みを表彰しました。今回は「車椅子インフルエンサー」をご紹介します。

 

一人だけ違うことが苦痛

私は9歳の時に原因不明で突然歩けなくなり、「横断性脊髄」と診断されて以来車椅子ユーザーとして生活をしています。

突然おへそから下の感覚がなくなり、自力で歩くことが出来ない下半身麻痺の障害者になって辛かったことは、歩けない事以上に、おへそから下の感覚がないせいで、排泄、排尿の感覚がなくなってしまった事です。

入院してすぐ、大人用のおしめと尿取りパッドを着用することになりました。

おしっこやうんこを漏らす事も普通になり、思春期の自分にプライドを捨てないと生きていけないくらい悲しい事でした。

初めてカテーテルで自己導尿の練習をした時、摘便の練習をした時は、一生こうしないと排泄ができないんだ、今までのようには生きていけないんだという絶望と、この姿を周りの人に知られたくないという恥ずかしさで涙が溢れたことを覚えています。

10歳で普通学校に復学できた私は、その事を周りの友人には恥ずかしくて言えませんでした。

尿取りパッドをしていて、常備している替えの尿取りパットを見つけられてしまった時に咄嗟に生理で。と嘘をついたり、水分の摂りすぎでおしっこを漏らしていた時に、お水をこぼしたと嘘をついたり。

社会人になってからも、下剤を飲んで1日排泄をする日(うんこするだけの1日をウンコデー略してUDと名付けましたw)の翌日に、先輩に昨日はなにしてたの?と聞かれて、家でずっと寝てと嘘をついたり。

休日に遊びに誘われても、UDをしないと排泄ができないので忙しいと断ったり。。

10歳から積み重ねてきた排泄障害を隠すための嘘が積もりに積もって、「自分はなにも悪くないのにどうしてこんな嘘ばかりつかなければいけないんだろう」と感じていました。

「誰も悪くないのになんで隠さなきゃいけないんだろう」

幼少期からずっと誰にも言えなかった「排泄障害」の悩みを、約5年前に思い切って声を上げて公の場でカミングアウトして伝えると言う行動をしてみました。

汚い、一緒にするな、などの誹謗中傷を覚悟の上で、NHKの番組や自身のYouTubeで排泄障害について話しました。

すると、
「自分も全く同じです!」
とか
「わかる!」
「私はこうしています」
「私はこれを使っています」
などの共感の声や、

車椅子の人って歩けないだけでなくてそんな大変な悩みがあった事を知りませんでした」
「涙が出ました」
「トイレがそんなに大変だと思わなかったので。今後は多目的トイレをそのような方の為に開けておこうと思いました」
などの暖かいメッセージが届きました。

幼少期からついていた小さな嘘が、どんどん大きくなり、生き辛くなっていた自分の心がふと楽になりました。

Thank you, mother!』

あの時カミングアウトして本当によかったと心から思います。

自分自身とても生きやすくなったし、同じ境遇の人とそうした話題を気軽に話しやすくなり、自分だけがこの辛い悩みを持っているわけじゃないんだと思えるようになりました。

声を上げて堂々と言わなくても、誰もが生理くらい当たり前に排泄障害の存在を知ってもらい、理解してもらえていたら、ちょっとは排泄障害がある人とない人の壁は無くなるのではないかなと思い、声を上げ続けたいと思う。

きっと、同じ障害、同じ状態の方で、そんな恥ずかしいこと言いたくない!一緒にしないで!と思う方もいるかもしれません。

そういう人が無理にいう必要はない。

だからただ私の例として、知ってもらうだけでいい。沢山に人にそういった事実を知ってもらう事で、恥ずかしくて言えない人がいわざるを得ない状況が無くなればいい昔の私のように嘘をつかないと生きていけない状況がなくなればいい。そう思います。

以前、UD(ウンコデー=下剤をのんで1日かけて排泄する日)についてのYouTube動画を実家で夜中に隠れて撮影していたのを母に見つかり、なんでそこまで言うの?恥ずかしくないの?って泣かれて、でもいう事で社会を変えたいの!って何度も言ったけど理解してもらえなくて泣かれたことがあった。悔しかったけどそれでも発信し続けた。

中嶋涼子の車椅子ですがなにか!? -Life on Wheels-(YOUTUBE)

そして今回この賞を頂いた事を母に伝えたら初めておめでとうって言ってくれて嬉しかった。

その気持ちも込めて、受賞式ではアカデミー賞でハリウッドスターがよく言う『Thank you, mother!』を2回、英語と日本語で言わせていただきましたw

37歳にして人生初の賞を頂く事ができて、とても嬉しいです!🥹

自分の歴史に残る素敵な賞を与えてくださったNPO日本トイレ研究所の皆様、大阪からわざわざ駆けつけてくれた泌尿器科医のマブダチ松下千枝先生、トイレに関する素晴らしい取り組みをされている他の受賞者の方々!!!

素敵な時間をありがとうございました。

中嶋涼子
中嶋涼子
車椅子インフルエンサー

1986年7月16日東京都大田区生まれ
9歳の時に突然歩けなくなり、原因不明のまま下半身付随になり車いすの生活へ。病名は「横断性脊髄炎」と診断される。
突然の車椅子生活により希望を見出せずに引きこもりになっていた時に、映画「タイタニック」に出会い、心を動かされる。以来、世界中の文化や価値観を、映画を通じて触れる中で、自分も映画を作って人々の心を動かせるようになりたいと夢を抱く。
2005年に高校卒業後、カリフォルニア州ロサンゼルスへ渡米。語学学校を経て、2011年、南カリフォルニア大学映画学部を卒業。2012年日本帰国後、通訳・翻訳を経て、2016年からFOXネットワークスにて映像エディターとして働く。2017年12月、FOXネットワークス退社後に、車椅子インフルエンサーに転身。
テレビ出演・YouTube制作・講演活動など様々な分野で活躍中。「障碍者の常識をぶち壊す」ことで、日本社会や日本人の心をバリアフリーにしていけるよう発信し続けている。

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