そのほか

炎症性腸疾患(IBD)を知っていますか?

宮﨑拓郎
宮﨑拓郎
株式会社ジーケア代表取締役(共同経営者)

2019/12/12

日本トイレ研究所では、トイレや排泄に関する専門家の方をお招きして、少人数でのトイレラボ勉強会を開催しています。
今回は、医師や専門家で構成するチームで、炎症性腸疾患(IBD)の患者さん向けにオンラインコミュニティを運営している宮﨑拓郎氏(株式会社ジーケア代表取締役(共同経営者))を講師にお迎えし、IBDの基礎知識や患者の方に必要なトイレ環境についてお話しいただきました。
以下に要旨をご紹介します。

IBDとは?

皆さんは「炎症性腸疾患(IBD)」という病気をご存知でしょうか? IBDは腸に炎症を起こす原因不明の病気で、潰瘍性⼤腸炎(Ulcerative Colitis:UC)とクローン病(Crohnʼs Disease:CD)の総称です。これらの疾患は生涯治らないことも多く国の難病に指定されています。国内の患者数は約25万人といわれ、現在も増加の一途をたどっています。

主な症状はひどい腹痛、下痢、血便などで、比較的症状が軽くなる寛解期と、悪化する増悪期(活動期)を繰り返すことが知られています。症状や、寛解期の期間などは人によりさまざまですが、悪化すると腸を摘出しなければいけないこともあります。

腹痛、下痢などの症状で頻繁にトイレに行くことや、入退院を繰り返すことが日常生活に大きな影響を与えるため、進学や就職に悩む患者さんは多く、経済的な負担を抱えている方も少なくありません。発症する年齢は10代~20代の若年が多く、男女比は同程度です。

IBD患者数は年々増加傾向

下図は特定医療費受給者証所持者の推移を表したものですが、潰瘍性大腸炎については2015年以降に若干、減少がみられます。これは患者数が減ったということではなく、余りに患者数が増えてきた結果、国の医療費受給の認定基準が変わり、症状が比較的軽いと判断された人が受給対象から除外されることが開始されたためです。
しかし実際には、急に症状が悪化し、通院回数や薬の量が増え、医療費の負担が増えることもあり潰瘍性大腸炎の患者さんは医療費の面でも大きな不安を抱えるようになりました。

JIMRO : https://www.jimro.co.jp/health.php
JIMRO : https://www.jimro.co.jp/health.php

IBDの症状と治療

潰瘍性大腸炎では大腸にびらんや腫瘍が起こります。クローン病では⼝腔から肛⾨まで消化管のどの部位にも炎症が起こりますが、多いのは⼩腸・⼤腸・肛⾨周囲に病変が生じるケースです。発症のメカニズムが不明のため、対症療法で症状を抑える治療が中心になります。薬による治療のほか、重症化した場合には、大腸全摘出や、人工肛門造設術などの外科手術を行うこともあります。

食事の管理は病状に大きく影響します。患者さん個々人で最適な食事が異なることが多いですが、特にクローン病の患者さんでは、脂質の量を制限するなど、食事に注意を払っている患者さんが多いです。

患者さんの疑問に答えるGコミュニティ

ジーケア㈱では、患者さんのためのオンラインコミュニティ「Gコミュニティ」を運営しています。IBD患者の課題として、「患者自身が必要な情報を得ることができない」ということがあります。その大きな理由は、①病状が人によって異なり、最適な治療や食生活も異なる、②消化器内科の専門医でもIBDの診断・治療ができる医師が少ないためです。

Gコミュニティでは医師や管理栄養士などの専門家が、患者さんの治療や症状、日常生活に関する疑問などに応えています。2019年7月にサービスを開始し、2019年10月21日現在、約300名の方が登録しています。
会員の方からは、「気軽に相談できる相手・場がなかったので、このようなコミュニティに出会えたことを本当に感謝しています」「治療に前向きになれ、症状も良くなることができました」などの声をいただいています。

 

IBD患者のトイレに関する不安

トイレラボ勉強会の開催にあたり、GコミュニティでIBD患者のトイレに関する簡易アンケート調査を実施しました。(回答者43名、実施期間2019/10/12 – 2019/10/17)短期間で試験的に行ったアンケートですが、IBD患者のみなさんがトイレに関して不安や困難を抱えていることがわかりました。

Q. 〈増悪期〉1日に何回くらいトイレに行きますか?(%)

Q. 〈増悪期〉1日に合計何分くらいトイレにいますか?(%)

増悪期(症状が悪化している時期)には、1日のトイレの回数が「15回以上」という人が15.9%、「11-15回」と合わせると50%に上ります。さらに、1日に合計何分くらいトイレにいるかという質問では最も長い人で「3時間以上5時間未満」(6.9%)でした。「2時間以上-3時間未満」(6.9%)という回答とあわせると約14%です。
頻度や時間に加えて、IBD患者の方は「いつトイレに行きたくなるかわからない」ため、外出時や災害時の避難に関してもトイレに不安を抱えていることがわかりました。

Gコミュニティでは今後、社会に対してIBDに関する情報を発信することで、患者さんの生きやすい社会を目指していきます。

宮﨑拓郎
宮﨑拓郎
株式会社ジーケア代表取締役(共同経営者)

米国管理栄養士、公衆衛生学修士。製薬企業で新薬の開発普及等に関わった後、渡米。ミシガン大学公衆衛生学修士修了、大学病院等での勤務を経て米国管理栄養士資格取得。
炎症性腸疾患(IBD)などの患者さんが前向きに安心して暮らすことをサポートしたいと考え、医療の専門家・当事者の患者らとともにオンラインコミュニティを設立・運営。

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