日本トイレ研究所では、11月10日のいいトイレの日に合わせて「日本トイレ大賞」として、トイレ・排泄に関する社会課題への取り組みを表彰しています。
2022年は、「大学生向けこころの健康相談統一ダイヤル広報啓発トイレットペーパー」と「鳥栖商業高校によるJR肥前麓駅トイレ清掃への協力」の2つの取り組みを表彰しました。今回は「鳥栖商業高校によるJR肥前麓駅トイレ清掃への協力」をご紹介します。
無人駅のトイレが復活!
鳥栖商業高校の最寄駅である肥前麓駅は、全校生徒の3分の1にあたる140名ほどが利用する駅で、学校まで徒歩8分という利便性の高い駅ですが、運営母体であるJRは維持管理コスト等の課題から、2022年3月より駅トイレの閉鎖を行いました。しかし、駅周辺の利便性を確保し鉄道の利用促進を図ることで公共交通の維持に繋げるためとして、市が駅トイレの維持管理を行うことになり、市とJRとの協議が整い8月よりトイレ利用が再開されることとなりました。
自分達に何ができるか
夏休みのある日、学校で就職活動の準備をしていた生徒達が、このことを話題にしていました。「肥前麓駅のトイレが復活したこと」と、「市の職員がトイレ掃除をしていること」を、です。そして、自分達にも何かできることがあるのではないかということで、生徒会で話し合うこととなりました。
生徒会の話し合いでは、「本来受け持つ仕事がある中で、(市の職員の方に)トイレ掃除に来てもらうのは申し訳なく、自分達に何か力になれることはないか」を考えました。そして、自分達の手でトイレ掃除をするのはどうかという意見が出ました。
ペーパーや掃除道具も、学校にあるものを使うことができそうだということで、市役所へ相談することになりました。
申し出をしたところ、市役所からは前向きな回答を得られました。シルバー人材などの雇用機会を奪うことになるのではという心配もありましたが、そのような予算は確保されていないことや、業務の合間に清掃を行なっているため、このような申し出はとてもありがたいということで、とても歓迎されたのです。さらに、もし事故などが起きた際の対応や保険などの心配もいただきました。
話し合いの結果、週2回行なっている清掃のうち、1回を鳥栖商業高校の生徒が担当することとなりました。また、清掃に必要な道具は市が負担することとなりました。保険については学校が加入している保険で対応可能ということで、活動実施の障害は全てなくなりました。
そして、2022年9月12日。晴れて初回の清掃活動が実施されることとなったのです。この取り組みはメディアにも多く取り上げられることとなりました。
生徒会では「やるのであれば、継続してやろう」「自発的にやる形にしたい」という意見も出ました
掃除の様子。今後も継続して取り組んでいくとのこと
清掃をする中で、新たな課題も見つかりました。それは、トイレの利用マナーです。例えば、流されていない汚物がよく見つかりました。家庭では自動的に流れるトイレも多いこともあり、気づかずトイレを出てしまうことが考えられます。また、的を外し、便器外に排泄した汚物や、男子トイレの前に尿が散乱していたこともありました。これらのことから、自分達生徒を含めた利用者にトイレマナーを伝えることが次の課題です。
地域の課題は自分達の課題
実は、鳥栖商業高校とトイレは関わりが深く、20年前には地域の企業協力のもと、企業の社員と生徒で協力して、きっかけこそ違えども、トイレ掃除に関する取り組みということで、運命的なつながりを感じました。
当初、ボランティアに参加する生徒は駅を利用する生徒のみでしたが、今では友人・同級生を誘い合い、駅を利用しない生徒も参加するようになりました。「地域の課題は自分達の課題」という意識で、今後も継続して取り組んでいきます。
今の気持ちを表してみよう!
PICK UP合わせて読みたい記事
-
子どものトイレ
男子のトイレ事情
小学校のリアルなトイレ事情をご紹介。第2回目の今回は『男子児童のトイレ事情』について、養護教諭の鈴木先生にお話しいただきます。
2019.11.28
-
子どものトイレ
見ないなんて、もったいない!
前回に引き続き、小学校のトイレ事情ご紹介します。 最終回は『うんちに興味を持つ』について、養護教諭 鈴木先生にお話しいただきました。
2020.01.30
-
子どものトイレ
魅力たっぷりに伝えたい!「うんちチェック(小学生の排便記録)と排泄教育」
「保健室の先生」も知らない!? 私は、養護教諭(保健室の先生)として日々子どもたちの健康をサポートしています。内科的な訴えや症状のある児童には問診をします。その中で、「最後にうんちをしたのはいつか?」「どんなうんちだった […]
2022.06.09
-
子どものトイレ
我慢しなくていい排泄環境を整えよう「小学生と保護者の排便に関する意識調査」
日本トイレ研究所では2022年の「うんちweek」にあわせ、「小学生と保護者の排便に関する意識調査」を実施しました。(小学1年生~6年生の子ども同席のもと、保護者を対象に実施) 子どもの排便状態について聞いたところ、「便 […]
2023.03.23
-
子どものトイレ
トイレに吸い込まれる!?
小学校のリアルなトイレ事情をご紹介します。今回は『小学生の和式トイレの利用実態』について、養護教諭 鈴木先生にお話しいただきます。
2019.11.19