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2020年はトイレ革命のスタート・上原大祐さん(パラリンピック銀メダリスト)の挑戦 

日本トイレ研究所
日本トイレ研究所
Japan Toilet Labo.

2020/02/13

みなさん、「トイレの日」があるのをご存知ですか?
日本では1985年から11月10日を「いい(11)トイレ(10)の日」としています!
日本トイレ研究所では毎年11月にフォーラムを開催し、すべての人が安心してトイレを利用でき、共に暮らせる社会について考えています。

「トイレに、愛を。フォーラム2018」レポート(前編)

今回は、2018年11月3日に江戸川区の協力を得て開催した「トイレに、愛を。フォーラム2018」から、上原大祐さんの基調講演「2020年はトイレ革命のスタート」の内容をお届けします。(次回、後編では 「これからのバリアフリートイレ」について、意見交換の模様をご紹介します)

バンクーバーパラリンピックで銀メダルを獲得した、アイスホッケー日本代表

「ごめんね」から「誇り」へ

上原大祐さんはアイスホッケー日本代表としてパラリンピックで銀メダルを獲得したメダリストです。現在はNPO法人のD-SHiPS32や一般社団法人障害攻略課の代表を務めるなど活発に活動されています。そんな上原さんの原動力である自信や誇りはアイスホッケーから生まれたとおっしゃっていました。

先天性の二分脊髄という障がいを持つ上原さんは、幾度となく母親から「こんな身体に産んでごめんね」と謝られた経験があるそうです。上原さんは19歳の時にアイスホッケーと出会い、日本代表としてバンクーバーパラリンピックで見事銀メダルを獲得しました。この瞬間に、母親から上原さんに向ける想いが「ごめんね」から「誇り」へと変わったそうです。アイスホッケーというスポーツは、上原さん自身だけでなく、周囲まで変えてしまったのです。 また、引きこもりの若者を見事、社会復帰させたエピソードもお話いただきました。

長野で長年引きこもりを続けていた青年をアイスホッケーに誘い、泊まり込みで合宿を行うなど様々なチャレンジを試みたそうです。初めのうちは気乗りせずに断られることが多かったそうですが、諦めずに誘い続けました。
すると、徐々に練習や合宿にも参加する機会が増え、最終的に青年は、長野から東京に上京し、一人暮らしを始めました。スポーツを始めることで、活発性や自信を生み出しました。このエピソードから、スポーツは様々な人のマインドをポジティブに変えることのできる魅力があると感じました。

上原大祐さん|パラアイスホッケー競技でパラリンピックに3大会出場。2010年バンクーバーパラリンピックでは、準決勝のカナダ戦で価千金の決勝ゴールを決め、銀メダル獲得に貢献。2014年にIPCが発表した「アイススレッジホッケー競技の歴史におけるトップ10プレイヤー」に選ばれる。引退後はNPO法人D-SHiPS32を立ち上げ、子どもたちにスポーツする環境づくりをしている。 2016年10月よりNEC東京オリンピック・パラリンピック推進本部 あつまろうぜ。グループ障がい攻略エキスパートとして所属。 (2018年11月講演時)

チェンジはチャレンジでしか生まれない

現在の上原さんは、車いすユーザーの視点を活かして様々な課題を発掘し、それを多くのビジネスに役立てることに取り組んでいます。
例えば、車いすユーザーのための着物を開発しました。この着物は上下が分かれていて、とても着やすくなっているのが特徴です。気軽に日本の着物文化に触れたい!という海外からの旅行客にも人気があります。さらには、旅館の女将さんのように仕事着が着物という場合において、着用時間の短縮になったと喜ばれているそうです。着物といえば上下が繋がっているもの、という固定概念がありますよね。しかし、上原さんはこの固定概念を壊し、「上下に分かれた着物」という新たなスタイルを生み出しました。

今までの常識を変えることによって文化の拡大や新たな価値が生まれます。上原さんは講演の中で「チェンジはチャレンジでしか生まれない」と語っていました。変化を恐れず挑戦しつづける上原さんならではの言葉ですね。

上下が分かれた着物のファッションショーを開催したときの様子

日本とアメリカのバリアフリーに対する意識の差

上原さんは、アイスホッケーの武者修行で渡米したとき、日本とアメリカのバリアフリーに対する意識の差を感じたと言います。
日本は一つひとつの質は高いが、設置の仕方が中途半端になっているとのこと。どういうことかというと、例えば、建物のエントランスにはスロープ等を設けて障がい者に配慮をしているにもかかわらず、建物内には多機能トイレ等は設置されていない場合があるのです。

一方、アメリカでは質は高くなくても、エントランスにスロープを設置してあるならば、建物内には必ず多機能トイレがあり、障がい者を迎える準備が出来ています。こういった意味では日本よりも、アメリカの方がバリアフリー化が進んでいると言えます。

上原さんは「バリアフリー施設は、とりあえず設置するのではなく、使えるように設置するのが大事」と指摘します。障がい者が何を課題として感じているかを想像する力が求められているということですね。2020年の東京オリンピック・パラリンピックを前に、もう一度立ち止まって、日本全体でバリアフリーの意識を見直す必要があるのではないでしょうか。

トイレの課題点と解決策

最後に上原さんがおっしゃっていたトイレの課題について何点か挙げさせていただきます。

1.車いすで入ると内から扉が閉められない!

トイレの個室の扉が外開きだと外側にいる人にぶつかってしまう恐れがあるため、日本では内開きが主流になっているようですが、車いすユーザーには使いづらいです。トイレの個室に入れたとしても、扉を閉められないため利用できません。アメリカでは内開きと外開きのどちらも対応可能な扉が設置されているそうです。良いアイディアは積極的に取り入れる柔軟性も、多様性社会には重要ですね。

2.どのくらい待てばいいのか知りたい!

多機能トイレ利用者の多くは利用に多くの時間を要します。その際に何分待てばいいのかあらかじめ知ることができれば、そのトイレを待てば良いのか、別のトイレを探すのか、を判断しやすいです。トイレの個室の内と外でコミュニケーションをとれるツールがあれば、そういった問題も解決します。上原さんはインターホンのようにボタンを押すことで合図を出すことのできるツールの作成を提案していました。

上原さんのお話を聞くことで、車いすユーザーならではの視点をたくさん学ぶことができてとても勉強になりました。多様性を認め合い、今よりももっとお互いが配慮し合える優しい社会になったら嬉しいですね。

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「トイレ」を通して社会をより良い方向へ変えていくことをコンセプトに活動しているNPOです。トイレから、環境、文化、教育、健康について考え、すべての人が安心しトイレを利用でき、共に暮らせる社会づくりを目指します。

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