そのほか

月経は立派な排泄

谷口 智海
谷口 智海
東京大学教養学部統合自然科学科4年

2021/05/20

月経も立派な排泄

「排泄」とは、生物体が体内に生じた不用あるいは有害な物質を体外へ出すこと。
(スーパー大辞林より)

一般的に、「排泄する」のは大便・小便だと思う人が多いと思います。げっぷやおならなど、口や肛門から出されるガスも体内で生じた不要・有害な物質ですから、辞書的な意味では、広義的に「排泄物」になるでしょう。

そして女性にとっては、経血も立派な排泄物だと思うのです。

女性の体はホルモンの規則的な変動に伴って、様々に変化します。
子宮は子宮内膜という粘膜によって覆われていて、排卵が起こると妊娠に備えて増殖して分厚くなりますが、妊娠しなければ剥がれ落ちます。
経血は、この要らなくなった子宮内膜が剥がれおちて体外に出たものです。
平均的には約28日のサイクルを基本として、この不要になった子宮内膜の排泄が起こります。

月経も立派な排泄

困ったことにこの子宮内膜の排泄は、大便や小便などとは違って、出すタイミングを自分で制御できるものではありません。

男性の友人らと月経の話題になったとき、出血は制御できると思っている人が多いと知り、驚いたことがありました。しかし月経を経験した人がわざわざ、出すタイミングは制御できないよ、なんていうこともないですから、月経を経験することがない人にとってはそう思って無理もないのかもしれません。

出すタイミングは制御できないので、経血はナプキンやタンポン、月経カップなどのいわゆる生理用品で受け止めています。

タンポン(左)とナプキン(右)

月経とトイレ空間

生理用品にはそれぞれ適正な使用時間があり、トイレで取り替えます。
外出先と家とでは幾分勝手が異なります。

ここからは外出先を想像してみてください。
数ある製品の中でも、ナプキンを使用している人が一番多いのではないかと思いますが、個人的に、今の日本の公共トイレは、明らかにナプキンに適応した作りになっていると感じます。

女性が使うことが想定されているほとんどトイレには、サニタリーボックスや汚物入れといわれる生理用品を捨てる用のゴミ箱が設置されています。しかし、多機能トイレ以外で個室内に手洗器がついているところって実は少ないと思うのです。

多機能トイレ内の便座から手の届く位置にある手洗器(右上)

なぜ、手洗器を話題にしたかというと、タンポンや月経カップなどを使うときは経血で手が汚れる可能性が高いからです。

想像がつきづらい方もいるかもしれませんが、手が経血で汚れた状態であちこち触るわけにもいきません。しかし、トイレットペーパーで確実に拭き取れるわけでもなく、かといって服をちゃんと着ないままに個室を飛び出して手を洗いに行くわけにもいきません。ウェットシートを常備していれば良いのかもしれませんが、外出先の状況によってはものを置ける台がないかもしれませんし、手が届くところにバッグをかけていても、経血がついていない方の片手でバッグの中を探すのは難しいですし、経血がついた手をバッグに突っ込むのもよろしくないでしょう。

そんなとき、便座に座った状態で手が届くところに手洗器があるだけで全然違うと思うのです。
設計する人にこういう経験がなければ、個室内に手洗器をつけるということは重要視されていないのかもしれません。(もちろん、配管などの問題で設置できないこともあるかと思います。)

近年では、環境への配慮などから日本でも月経カップが注目されていますが、個人的に月経カップはタンポンよりも外出先で使用するには障壁が大きいと思います。それは、前述したように個室内の設備が月経カップを使うことに対応できていないことが挙げられます。このような製品の普及や快適な使用には、トイレ空間の適応も必要になるのではないでしょうか。

月経カップの例 エヴァカップ(インテグロ株式会社)
https://www.integro.jp/hubfs/Integro/images/20191203evacup06.jpg

排泄にはトイレが必要

少し話題が大きくなりますが、想像してみてください。

今当たり前にあるトイレがもしなかったら、あなたの生活はどうなってしまうでしょうか?

もし、学校にトイレがなかったら。満足に勉強することもできないでしょう。
もし、職場にトイレがなかったら。まともに仕事をすることもできないでしょう。

あなた自身の生活が成り立たなくなることは容易に想像がつくと思います。

女性にとってトイレは、単に大便や小便を排泄する場所であるだけでなく、月経という制御しきれない排泄をサポートする場でもあります。

現代において、女性が学校に通ったり仕事をしたりするのは、トイレという空間が保障されていなければ、決して成り立ちません。

世界には、学校に適切なトイレ設備がないことによって、月経中に学校を休む女子生徒がいます。彼女たちは、休みたくて休んでいるわけではなく、休まざるを得ないのだと思います。
平均的に、月経は約1ヶ月に1回、約3-7日間続くわけですから、その間教育を受けることができず、月経のない生徒と比べれば、教育機会が少なくなってしまうことは明らかです。

世界には、というと日本では関係ないと思う人がいるかもしれません。

しかし、日本でも経済的な理由で生理用品を買えなかったり、月経に関連した心身の不調があったりして、学校や仕事に支障をきたしているという問題は起きています。

少しトイレの話とは離れますが、月経は排泄があるときだけ、サポートが必要になるわけではありません。

PMS(月経前症候群)やPMDD(月経前不快気分障害)など、月経前に生活に支障をきたす身体的・精神的な症状が出ることがあります。PMSについては月経がある女性は約9割がなんらかの症状を経験しているという報告もあり、お互いに理解し合う姿勢が重要になるでしょう。

トイレ空間だけでなく、生理用品や周囲の理解などを含めた月経をサポートするものが揃わなければ、月経という排泄は女性にとって、足かせになってしまいます。

最後に

排泄とは、いらなくなったものを出すこと。
私たちが生きるために必要なエネルギーを生み出す過程では、必ずゴミがでます。
いらなくなったものを排泄して、それを処理するために、私たちは日々の生活の中で保障された空間やものを必要としています。

まだ21年しか生きていない私でも、この数年で月経やトイレに対する社会の捉え方は変わってきていると感じます。もっとトイレのことを話そう、考えよう、もっと月経を理解しよう、理解してもらおうという動きを感じ、私自身もこのような形で生理とトイレを伝えようとしています。

女性にとって、月経も立派な排泄であると私は思います。

女性が勉強して、仕事をして、社会に出て活躍するためには、性別に関わらず月経を理解しあい、サポートすることが必要です。

それを自然に、当たり前にできている世界になればと思います。

参考サイト
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210319/k10012922551000.html
https://www.wateraid.org/jp/publications/menstrual-hygiene-management-in-schools-south-asia
https://readyfor.jp/projects/wateraid_toilet
https://www.kobayashi.co.jp/corporate/news/report/pdf/v31.pdf

谷口 智海
谷口 智海
東京大学教養学部統合自然科学科4年

高校時代に災害時のトイレ問題についての課題研究を行い、高校3年の時に第2回日本トイレひと大賞グランプリを受賞。高校卒業後も日本トイレ研究所や大阪大学トイレ研究会での活動に参加するなど、様々なフィールドにおけるトイレに興味を持ち、分野横断的に関心を深めている。

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