はじめまして。わたしの仕事はデイサービスで日常生活の悩みに対して高齢者の皆さんと一緒にリハビリに取り組むことです。 今回は実際の現場から高齢者の皆さんとトイレの悩みにどのように取り組んでいるのかをお伝えします。私の勤めるデイサービスでは自分でトイレまで歩いて排泄ができる方がほとんどですが、それゆえにトイレの悩みがとても大きく生活に影響するのです…。
デイサービスでの取り組み①
デイサービスの利用者さまとは長いと10年近いお付き合いの方も。おひとりずつ個別でリハビリ対応をしますがトイレの悩みは誰にも相談されませんでした。
あるとき排泄ケアの勉強をしていることを皆さんの目に留まるように“お悩みがあればご相談を!”とホワイトボードに記したところ驚くほどの反響がありました。「なぜ今まで言ってくれなかったのか?」とも思いましたが、それほどデリケートな問題で気軽に口にできないことや言っても仕方がないと思っていたことがわかりました。
それ以来、リハビリのワンポイントアドバイスを記すホワイトボードには“うんち・おしっこ”のことを面白く絵を入れて表現し、利用者さまが運動しながら「本当にこんな感じ!大変なのよ~」と抵抗なく排泄のことを口にできる環境づくりに取り組んできました。
1人の悩みはみんなの悩み
ニーズに合わせてリハビリ目的に散歩をすることがあります。誰もいない開放的な空間はデリケートな話もしやすくなります。
とても衝撃的だったのは「私が大好きだった百貨店へ行かなくなった理由は何だと思う?」と聞かれたことがあります。歩行に時間がかかるようになっていたため「体力的に歩いて回るのが辛くなったからですか?」と答えました。すると意外にも理由は“トイレ”でした。
大好きで楽しく通っていた百貨店で失敗してしまったそうです。もともと便秘傾向にあり下剤も内服していましたがコントロールが効かずトイレに間に合わなかったそうです。恥ずかしさと辛さとでしばらくしてから百貨店へ行ってもすぐトイレを探してしまう自分に気づき、大好きだった百貨店が怖くなったとお話しくださいました。
外出を控えるようになると活動量が減りフレイル(虚弱)へと移行します。体の痛みや歩行困難ではなく“トイレ”が理由で外出ができなくなったのは、その方だけではありません。
娘さまが「お母さん今のうちに旅行しておこうよ。車に座っているだけだし不安だったら車椅子を借りればいいから」と提案することはとても良いことだと思います。ただ、ここで拒否をする利用者さまは1人ではありません。
多くの方は「行きたくないって断ると娘は遠慮しているって思うみたいなの。本当に行きたくないのに…」というお話をよく耳にします。理由は…やはり“トイレ”です。
昨今、高速道路のサービスエリアのトイレはとても近代的なデザインで思わずスマートフォンで写真を撮りたくなるほど綺麗です。ところが昭和10年代生まれの方のイメージは異なります。また車椅子に乗ってしまうと自由にトイレへ行けなくなることや、宿泊先のトイレも気になります。「そこまでして行きたくない」というのが本音だそうです。
デイサービスでの取り組み②
利用者さまからのトイレ相談で多いのが頻尿・尿漏れ・便秘です。頻尿で、多い方は1日20回以上にもなりご本人さまが一番辛い思いをしています。また尿漏れで悩んでいる多くの方はトイレットペーパーを重ねてショーツにあてていました。身近にある生理用品をあてている方も多くデリケートゾーンがかぶれる悩みもありました。便秘では下剤を使用して毎日出す習慣にしている方が今でも多いのが現実です。
利用者さま全体にはホワイトボードで皆さんの目に留まるようにして「自分だけじゃない⁈」と安心してもらい間違った対策をしないように呼びかけています。
ひとりひとり悩みの大きさは異なります。生活内でトイレが負担となっている利用者さまには記録できる環境と身体機能があれば排尿日誌や排便日誌を記録していただきフィードバックするようにしています。口頭でお伝えするだけだと忘れてしまうこともありますし、その時理解できなくても、つい頷いてしまうこともあるので、書面にしてお渡しするようにしています。すると翌週にはたいてい「改善したよ!」と笑顔で報告してくださいます。
“うんち・おしっこ”のことをフツーに会話できるように
最近では「今日朝ごはん食べた?」と同じように「今朝うんち出た?」と口にできる環境になってきているように感じます。トイレで排泄したあとは必ず目で見て色や量・形を確認することから体のサインを見逃さないように伝えています。
なかには「今日のうんちはいい顔していたよ!」と報告してくれる利用者さまもおり…うんちに顔があるのか(笑)とよく見て観察している様子に感心させられます。
独居高齢者が増え排泄で失敗した際には自分で掃除をしなければなりません。この大変さは私たちの想像をはるかに超え、時間も要します。失敗したら「なぜそうなったのか、今後はどうするといいのか」を一緒に考えてリハビリとして対応しています。
自分の体と向き合い自信がつくことで自然と活動量が増え穏やかな日常生活が送れることを願って日々リハビリに取り組んでいます。
今の気持ちを表してみよう!
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