日本トイレ研究所は2009年にNPO法人化してから、昨年10月で10周年を迎えました。皆さまへの感謝の気持ちと、さらに今後も一緒に活動をしたいという思いを込めて、11月20日に10周年記念イベント「トイレに、愛を。フォーラム」を開催しました。
記念講演では、川邊健太郎さん(Zホールディングス株式会社代表取締役社長CEO・ヤフー株式会社代表取締役社長CEO)に、「今後のインターネットとトイレについて」と題しビッグデータの力で、「未来のトイレがどうなるか」をお話しいただきました。
ビッグデータ×トイレでできること
そのなかでも特に印象の強かった3つのテーマ、①トイレ待ちがなくなる、②災害時避難所へのトイレ提供が最適化される、③検索結果から見えてきたトイレの注目度について要旨をご紹介します。
トイレの満空状況を把握
まず1つ目に挙げていただいたのは、「トイレ待ちがなくなる」です。
現在、国内の公衆・公園トイレは推定2万4854か所(MapFan検索結果より集計)、コンビニ店舗数は5万5711か所(コンビニエンスストア統計データ)あり、利用できるトイレの数は増加してきたといえます。
一方で、見つけたトイレが空いておらず、すぐに入れない場合もあります。
それは公共のトイレに限ったことではなく、職場のトイレでも同様です。
3年前、現在のヤフー本社に移転する際の責任者だった川邊さんは、オフィスのトイレの環境改善に取り組みました。
「みんなが忙しく働いているなかで、同じトイレに人が一気に駆け込んだ場合、混雑が生じて生産性が落ちるし、緊急の人が間に合わないかもしれない。そこで、トイレのドアにセンサーをつけてトイレの満室・空室状況(満空状況)がWebサイトで確認できるシステムを導入しました」(川邊さん)。
これにより、従業員はトイレに行く前に満空状況を把握できるようになりました。
さらには、各階ごとの満空状況を分析することで、比較的余裕のあるフロアへ社員を誘導したり、長時間利用者に声をかけることによって安否確認をしたり、オフィス環境の改善につなげることもできます。(注・ヤフーのオフィスは従業員が自席を持たないフリーアドレス)
この仕組みを街中に広げることができれば、全国のトイレの満空状況が可視化され、トイレ待ちをゼロにすることも可能かもしれません。
“隠れ避難所”を発見し、物資を提供
2つ目に挙げていただいたのは、「災害時避難所へのトイレ提供が最適化される」です。
日本の国土面積は世界全体の0.28%に過ぎませんが、マグニチュード6以上の地震の発生数は世界のうち20.5%を占め、災害被害金額は世界の11.9%に上ります(一般財団法人国土技術研究センター)。
「ヤフーが日本に根ざすプラットフォーマーとして力を入れているのが、防災・減災の分野です。災害が起こった時、指定避難所においてもトイレは不足しがちですが、自然発生的にできる“隠れ避難所”の問題もあります」(川邊さん)
さまざまな災害が起こるなかで、自治体が想定した指定避難所に行くことができないケースが発生すると、自然発生的に人が集まる“隠れ避難所”ができます。今年の台風15号、19号の場合もそうした現象が起こりました。ヤフーは2016年の熊本地震についてビッグデータを用いた分析を行いました。
ヤフーでは人口密度マップと呼ばれるビッグデータを利用して、普段の人口密度分布と比べ災害発生後に人が多く集まっている場所を見つけることで、隠れ避難所を推定しました。
今後、人口密度マップデータと他のビッグデータをかけあわせることで、現場のニーズをより具体的に可視化し、災害用トイレをはじめとする必要な物資を、必要な量、届けることが可能になるでしょう。
「インターネットサービス事業者と、行政、自衛隊などが連携することで、こういったシステムができつつあります。ビッグデータを使うことで、きめ細かい支援ができ、災害時のトイレ問題もスピーディーに解決される未来が来るのではないかと思っています」(川邊さん)。
ビッグデータで社会課題を解決
様々な分野での活用が予想されるビッグデータですが、これまではビッグデータにアクセスできる人や企業は限られていました。
ヤフーでは多くの人がビッグデータを活用できるよう、今年10月31日にデータソリューション事業を開始しました。そのうちのひとつが、生活者の様々な興味関心を統計化し、可視化するサービスである「DS.INSIGHT」です。
トイレの注目度はタピオカより高い?!
DS.INSIGHTを利用すると2018年の1年間に「トイレ」と検索した人は、ブームになっている「タピオカ」より多く、「イケメン」並みの関心があることがわかりました。 トイレと一緒に検索されたキーワードを分析することで、「ペットのトイレ(犬、猫等)」「トイレ空間の充実(インテリア、リフォーム等)」「つまりの悩み(つまり、解消等)」が多いことがわかりました。
また、「うんち」と検索するより「便秘」「下痢」などの具体的な悩みで検索する人が圧倒的に多いこともわかりました。さらに、赤ちゃんの排泄について調べる人が多い傾向にあります。
これからの社会では、オンラインだけでなくオフラインでも莫大なビッグデータが生み出され、両方を掛け合わせて活用していくことで、利便性の向上や課題の解決につながると予想されます。
ビッグデータの活用でトイレの課題を解決する川邊健太郎さんのお話、とても刺激的でした。
日本トイレ研究所でも、トイレ環境の改善や排泄にまつわる課題の解決に向けて、ビッグデータの力の活用を考えていきたいと思います。
今の気持ちを表してみよう!
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