そのほか

人生100年時代の排泄問題 第1回|うまく出せない

高橋 競
高橋 競
獨協医科大学公衆衛生学講座/東京大学高齢社会総合研究機構

2020/03/19

皆さん、こんにちは。高橋競と申します。私は現在、東京大学の高齢社会総合研究機構という組織に所属しており、高齢者の健康に関するいろいろな研究をしています。
これから4回にわたり、超高齢社会を迎えた日本における高齢者の排泄問題についてお話しします。

高齢化と排泄

世界中で高齢化が進んでいます。その中で日本は、高齢化のフロントランナーと言われています。2019年に発表された日本全体の高齢化率(全人口に占める65歳以上人口の割合)は28.1%でした。
これは世界で一番高い数値で、4人に1人以上が高齢者ということになります。平均寿命は延び続けており、「人生100年時代」という言葉もよく耳にするようになりました。

人は誰もが年をとります。そして年をとると、排泄の問題に悩まされることが増えます。高齢化が進むということは、排泄に悩む人が増えるということです。長い高齢期を過ごす私たちは、もっと排泄に関心を持たなくてはなりません。

年をとると増える「出せない」症状

では、高齢期の排泄問題とは具体的にどのようなものなのでしょうか?今回は、尿や便をうまく「出せない」ことについてお話しします。

トイレに行ったのに尿がなかなか出ない、尿は出るが勢いがない、尿が溜まっているのに尿意を感じない――年をとると、このような尿が「出せない」症状が増えます。原因としては、尿道が狭くなったり、排尿をコントロールする神経の反応が鈍くなったり、薬の副作用があったりすることが考えられています。

そして、便が「出せない」症状である便秘も増えます。便が溜まっているのに出せないのは、とても苦しいですよね。多かれ少なかれ、皆さんも経験があると思います。
日本や海外の研究では、年をとると男女とも便秘がグッと増えることが報告されています。明らかな原因は不明ですが、私が進めている研究では、年をとることによる筋肉の衰えや食事量の減少の影響が大きいことが分かってきています。

出すことは、生きること

皆さんは、1日に何回トイレに行きますか?
その回数は1年前から変化していますか?
尿や便がきちんと「出せない」状態が続くと、身体や心にとても大きな負担がかかります。自力で尿が出せない場合などは、生命の危険にもつながってしまいます。

まずは、自分の排泄パターンやその変化への意識を少しだけ高めてみてください。やがて高齢者になる若い皆さんも、ぜひ!
最近では「大人のためのおなかすっきりダイアリー」(*このサイトを離れます)など、排泄の記録に役立つツールもでています。排泄への意識を高めて、気になる変化があれば、ためらわずに専門家に相談を。
人生100年時代をスッキリ生きていきましょう。

高橋 競
高橋 競
獨協医科大学公衆衛生学講座/東京大学高齢社会総合研究機構

理学療法士やJICA専門家として国内外におけるリハビリテーション業務に従事した後、東京大学大学院医学系研究科において博士号(保健学)を取得。現在は、障害者や高齢者の排泄障害、フレイル予防、健康長寿のまちづくり等に関する研究に取り組んでいる。

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