おすすめトイレ

日本のトイレは困っている?

星野 勝太
星野 勝太
地方公務員・NPO法人両育わーるど理事長

2020/05/21

今回から3回にわたって、ダイバーシティから考える日本のトイレ問題について、地方公務員でNPO法人・両育わーるど理事長の星野勝太さんに連載していただきます。

日本のトイレは最低?

現在、日本のトイレは素晴らしい、COOL JAPANだと言われています。確かに座れば暖かく、座ろうと近づくと便座の蓋が自動的に開いたり、さらには立ち上がると自動的に水が流れます。

 確かに私にとっては快適です。ただ、他の人にとってはどうなんでしょうか。たまたま、私には障害や難病などがある友達が多いんです。そして、その友達が声をそろえて言うのです。
「日本のトイレは最低だ。」

そう、障害や難病などがある人たちにとっては日本のトイレは課題だらけらしいのです。

日本のトイレは困っている。

日本において障害者手帳を持っている人が約850万人、指定難病のある方が約90万人、指定難病以外の難病がある人が約700万人。日本の人口が約1億2千万人だとすると、障害手帳、指定難病者など重複していてその人数を約1,300万人と言われています。ということは9人にひとりは何らかの障害や疾患のある人がいるといえます。えっ??

9人にひとり

びっくりしますよね。でも、いるんです。とすると、日本のトイレはどうなんでしょう。例えば、私が今働いている職場のトイレを調べてみます。フロアで働いている人数が約300人。男性トイレは6基、女性6基、多目的トイレ1基です。

労働安全衛生法における事務所衛生基準規則によると以下のようにあります。

第十七条  事業者は、次に定めるところにより便所を設けなければならない。
一 :男性用と女性用に区別すること。
二 :男性用大便所の便房の数は、同時に就業する男性労働者六十人以内ごとに一個以上とすること。
三 :男性用小便所の箇所数は、同時に就業する男性労働者三十人以内ごとに一個以上とすること。
四 :女性用便所の便房の数は、同時に就業する女性労働者二十人以内ごとに一個以上とすること。

そこで今働いている職場の男女比を調べると男性6に対して女性が4となっていました。ざっくり計算すると男性180人、女性120人。規則からすると男性は3基、女性は6基となり男性も女性も数は足りているようです。

ただ、この規則には多目的トイレのことは記載していません。なぜなら障害者の雇用については障害者雇用促進法にゆだねているからなんです。
その障害者雇用促進法には「事業主は、障害者である労働者について、障害者でない労働者との均等な待遇の確保又は障害者である労働者の有する能力の有効な発揮の支障となっている事情を改善するため、その雇用する障害者である労働者の障害の特性に配慮した職務の円滑な遂行に必要な施設の整備、援助を行う者の配置その他の必要な措置を講じなければならない。」となってるので、企業や団体などの職場はもっと頑張った方がいいと思うのです!!
(残念ながら設備の未整備についての罰則規定はないですが。)

また、例えば外出先で考えてみましょう。東海道新幹線N700Aでは1編成でトイレは合計23基(うち男性用小便器7基)、うち車いす対応は1基で、新幹線の乗車定員は1323席だそうです。16両編成の列車でも1か所しかありません。さらに驚くことに、新幹線の車いす利用者用の座席って1か所しかありません。

なお2020年7月から導入される予定の東海道新幹線の新型車両N700Sでは、1編成あたり2か所になるそうです。

JR東海「歩行の不自由なお客様へ」
https://railway.jr-central.co.jp/pwd/wheelchair/index.html

JR東日本「お身体の不自由なお客様へ」 
https://www.jreast.co.jp/equipment/equipment_1/car/

障害がある人たちの外出には様々な壁があり、そのうちのひとつがトイレなんです。

そこで、「公共トイレにおける合理的配慮」について考えてみたいと思います。次回は、障害者や疾患、子育て、介護などにより日常的にトイレに困っている人たちも含め誰もが利用する公共のトイレって何か考えてみたいと思います。

星野 勝太
星野 勝太
地方公務員・NPO法人両育わーるど理事長

大学卒業後、10年間ゼネコンで働いたあと、東京にある市役所に転職。転職をきっかけに始めた知的発達障害児施設のボランティア活動経験から、障害者や社会的マイノリティの問題に向き合う。現在は公務員の傍らNPO法人両育わーるどの理事長として障害・難病等の理解に向けた活動をしている。

PICK UP合わせて読みたい記事