日本トイレ研究所では、皆さまが使いやすい!と思う「お気に入りトイレ」の情報を集めてきました。
情報を提供していただいたなかから、フォトグラファーで電動車いすユーザーの近藤浩紀さんにおすすめいただいた、“東急電鉄 二子玉川駅構内のトイレ”を実際に訪れ、どこがお気に入りのポイントなのかをご説明いただきました。
近藤さんのお気に入りポイントから、4つをご紹介します。
まず第一に、きれい
近藤さんの「お気に入りポイント」は、まず1つ目に「きれい」。日本トイレ研究所が行った「お気に入りトイレ」のアンケート調査(PDF)でも、「きれい・清潔」を挙げた方が最も多く5割以上に達しました(有効回答226件、自由記述)。多機能トイレでも一般のトイレでも、きれいでなければ心地よく使えないことが改めて結果に現れました。
多機能トイレが2つある
2つ目は「多機能トイレが2つあること」。当然ですが、多機能トイレが1つしかなければ、空くまで待つか、他の場所にトイレを探しに行くことになります。1つしかないトイレを待つのは、どのくらい待てばいいのかわからず焦りますよね。
東急電鉄株式会社・施設課の小平智子さんに伺ったところ、こちらのトイレは2015年に改修され、以前は男女それぞれのトイレ内にあった多機能トイレの入り口を、外側にしたそうです。介助者が異性であったり、親子で性別が異なる場合でも気兼ねなく入れるよう、男女共用としています。
2つの多機能トイレの間取りは異なり、向かって右側のトイレの面積が広く、車いすに対応しているほか、オストメイトとユニバーサルベッド(大人でもおむつ交換や寝た状態で衣服の着脱ができる折りたたみ式シート)が設置されています。
左側の多機能トイレも車いすでの利用が可能で、ベビーチェア、ベビーベッドが設置されています。スペースや導線の制約があったため、広さや設備の異なる多機能トイレを2つ設置したそうです。
女性用トイレ、男性用トイレのなかにもベビーチェアとベビーベッド、オストメイトをそれぞれ設置しており、機能を分散させています。多機能トイレに色々な人のニーズが集中して待ち時間が長くならないよう、国土交通省でもこうしたトイレの機能分散を推進しています。
開閉ボタンの位置が大切
3つ目のお気に入りポイントは、多機能トイレ内の開閉ボタンの位置です。
トイレの中にある開閉ボタンが自動ドアから少し離れた位置にボタンが設置されているので、車いすでスムーズにトイレに入り、ドアを閉めることができます。
ボタンで開閉する自動ドアのなかには、利用者がトイレ内に入り切ってから「閉じる」ボタンを押さないと、センサーが作動しないものがあります。そうしたボタンがドアに近い位置にある場合、車いすでトイレに入りながら「閉じるボタン」を押すとセンサーが後輪に反応して閉まらないため、トイレ内で車いすを回転させてからボタンを押す必要があるそうです。
近藤さんに車いすでトイレに入る動作を見せてもらうと、後輪がトイレ内部に入りきるまで、思っていた以上に距離が必要なことがわかります。「トイレ内で回転する広さがあれば、使えないわけではないけど、煩わしさは感じます」(近藤さん)。
鏡や洗面台の高さだけでも、使いやすさは大きく変わる
4つ目のお気に入りポイントは「車いすに座った状態でも胸から上が鏡に映ること」。車いすユーザー以外の方は「鏡に映るなんて普通では?」と思われるかもしれません。
しかし近藤さんをはじめ、車いすユーザーの方に聞くと、多機能トイレであっても「鏡の位置が高すぎたり、角度がついているせいで、頭のてっぺんしか映らない」ということは少なくありません。
また、二子玉川駅のトイレは洗面台の位置もちょうど良いとのこと。洗面台が高すぎると、手を洗うとき、腕よりも指先を高く上げることになるため、袖に水が流れてかなり濡れることになるそうです。
近藤さんからはこのほか、L字型手すりが使いやすい、床がすべりにくいなどのお気に入りポイントを具体的に教えていただきました。
まとめ
近藤さんと一緒に現地調査を実施して、私たちも改めて多機能トイレを必要としている当事者の方の意見を聞くことが大切だとわかりました。車いすを使用している方のなかでも、それぞれに求める設備や配置は異なりますが、多様なニーズを持つ方々が安心して外出できるトイレ環境づくりが求められていると思います。
なお、東急電鉄では2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向け、今後も各駅において、▼多機能トイレの男女共用化、▼スペースに応じて男女それぞれのトイレへの機能分散、▼ウォシュレットの設置、▼和式から洋式への改修等を進めていくそうです。
駅のトイレがより安心して使えるようになることを期待します。
(協力・東急電鉄株式会社)
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