子どものトイレ

トイレに吸い込まれる!?

鈴木 登志枝
鈴木 登志枝
公立小学校 養護教諭

2019/11/19

”子どものトイレ”では、3回に渡って、小学校のリアルなトイレ事情をご紹介します。今回は『小学生の和式トイレの利用実態』について、公立小学校の養護教諭 鈴木登志枝先生に記事を執筆いただきました。

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和式トイレは難しい

春休みのある日、入学を控えた親子が学校へやって来ました。
その理由は、「和式トイレを体験させてほしいから」ということでした。
一緒にトイレに行き、使い方を説明しました。
すると、「トイレに吸い込まれそう…」不安げにつぶやく子の様子を見て、今までのトイレ経験を聞いてみました。
幼稚園でも、家庭でも洋式トイレでしか用を足したことがなく、入学を目前に和式トイレの経験をさせたいということで、公共施設やファミレスなどを巡り和式トイレを探していたと言います。
また、実際にしゃがむ姿勢をさせたところ、そのまま便器にペタッと座ってしまいました。
中腰の姿勢のまま用を足したことなどなかったのです!

今や和式トイレは「珍しいもの」、そして、子どもには「難しいもの」となっていることを知りました。

大人の私たちであれば、和式トイレでも洋式トイレでもそのトイレに合わせてしゃがんだり、座ったりと自分がトイレに合わせる。
もしくは、自分のスタイルに合ったトイレを選択します。
しかし、それは大人の感覚かもしれません。
子どもにとっては、まさに未知!なのです。

 

運動器の状態は和式トイレの利用方法に影響を与える

学校にも全く洋式トイレがないわけではありません。
しかし、和式、洋式どちらのトイレが空くかわからなければストレスに感じる子どもも中にはいることでしょう。

平成28年度より、児童生徒の健康診断に運動器の検診が追加実施されています。
これは、脊柱・胸郭・四肢・骨・関節の疾病や異常を早期発見することを目的に行っている検査です。
内科検診と併せて学校医が判定し、必要に応じて医療機関を受診し、専門医の判定へとつなげます。

この検診の前に、家庭における観察の結果や学校での日常の生活や運動の様子をチェックする保健調査票があります。
ここに、「しゃがみこみ」といって「足の裏を全部床につけて完全にしゃがめますか」という項目があります。

これができない児童が1学級に1、2人います。
まず、足の裏全部を床につけた状態でしゃがめなかったり、ふらついたり、前後に転んだりしてしまいます。
この子たちが和式トイレでしゃがんだら?きっと、つま先立ちでしゃがむかフラフラとふらつきながら用を足すことになるかもしれません。
そうです。
安心して和式トイレでは用が足せないことが予想できます。
事実、金隠しにつま先をそろえて用を足すように指導をしても、はみだしがなかなか改善されない状況があります。

和式トイレでの経験もさることながら、運動器の状態も少なからず和式トイレでの用の足し方に影響しているのではないかと考えられます。

鈴木 登志枝
鈴木 登志枝
公立小学校 養護教諭

福島県公立学校養護教諭。養護教諭専修免許、管理栄養士免許をもつ。
「出し方だって大切だ」を合言葉に、排便やトイレの使い方の指導を行う 「うんち教室」を実施している。
学校では子どもたちとトイレ点検を、 自宅では一日の終わりにトイレ掃除を欠かさない。

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