子どものトイレ

子どもの便秘、ほうっておかずに対処しよう

日本トイレ研究所
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Japan Toilet Labo.

2020/08/06

子どもだって便秘になる

便秘といえば女性の悩み。そう思っている人は多いのではないでしょうか?

ところが赤ちゃんや子どもでも便秘になることは珍しくありません。しかも、ほうっておくと症状が悪化しがちです。早い時期に適切な治療をすることが大切になります。

赤ちゃんや、うまく自分の感覚や意思を伝えられない年齢の子どもにとって、うんちは健康状態を教えてくれる大切なバロメーターです(もちろん大人の健康においても、うんちは大切です!)

便秘が気になりだした時期、0歳が半数以上

日本トイレ研究所の調査で、便秘状態にある子ども(1歳~3歳)の保護者568人に、「子どもの便秘症状はいつ頃から気になりだしましたか?」と聞いたところ、「0歳」が53.5%と半数以上を占めており、その内訳は「6か月未満」が23.3%、「6か月以上1歳未満」が30.2%となりました。(母親と子どもの排便に関する実態調査結果、2019年)

約1/4近くの保護者が「6か月未満」としており、生後かなり早い時期から便秘が始まっていることがわかりました。

子どもの便秘治療の指針である「小児慢性機能性便秘症診療ガイドライン」によると、子どもが便秘になりやすいきっかけとして、①母乳から粉ミルクへの移行または離乳食の開始時、②トイレトレーニング、③通学の開始や学校での排泄を避けること、が挙げられています。

「出ない」だけが便秘じゃない

そもそも便秘とは、どのような症状のことを指すのでしょう?

便秘の診断基準として、子どもの場合、以下の項目に2つ以上あてはまる状態が1か月以上続いていると便秘と考えられます。

子どもの便秘チェック
(監修 中野美和子医師)

□うんちの回数は1週間に2回以下

□うんちをもらしてしまう、または下着についてしまう
(少量のうんちがしょちゅう出る)

□うんちがたくさんお腹にたまっている

□うんちが硬い、あるいは出すときに痛みがある、出血する

□うんちを我慢してしまう

□トイレが詰まるくらいの大きなかたまりのうんちが出る

排便の回数が少ないことも便秘を判断するひとつの目安ですが、出ていたとしても量が少なかったり、硬すぎたりするなど、「すっきり」と出せていない状態は便秘の可能性があります。

前述の調査では、便秘状態の子どものうち半数以上が、平均的な排便の頻度が「1日2回」「1日1回」「2日に1回」など、回数だけをみると“うんちが出ている”状態でした。

子どもの便秘は“悪循環”が起こりがち

子ども便秘はどのような仕組みで、なぜ悪化するのでしょうか?

子どもの排便の専門医である中野美和子先生(熊本大学病院 小児外科・移植外科)によると、背景には子ども特有の事情があるそうです。

中野先生によると、少しずつ便秘が進んだり、なにかのきっかけで便秘が進んだとき硬い便になり、排便の時に痛みを感じると、子どもが排便を我慢するようになるといいます。「排便の時に痛い思いをすると、1~3歳の小さい子どもでは、排便が怖くなってきます。このため、次の排便を我慢するようになります」(中野美和子『赤ちゃんから始まる便秘問題―すっきりうんちしてますか?〈第3版・改訂増補〉』より、以下同)。

便意を我慢している子どもによくみられるのが、「両足をX形に交差させ、何かにしがみついて、我慢」するポーズだそうです。我慢を繰り返していると、「直腸には便が残ったままですから、そこで水分が吸収され、どんどん硬く、あるいは大きくなっていきます。そうなると、出るときにさらに苦痛ですから、さらに我慢するようになり、そこで、「悪循環」がおこります」。

ヒトの直腸は通常はからっぽの状態であり、そこに便が降りて来て、便によって直腸の壁が押し広げられることで“便意”を感じます。

ところが子どもが便秘になり、先ほどの悪循環の状態になると、直腸にはつねに便が存在する状態になります。直腸に便が溜まる状態が続くと、大きな便をなんとか出した後も通常のように細く戻らずに、ぶかぶかの直腸のままになってしまいます。

このような直腸になってしまうと1~2日分の便が降りてきても、便意を感じにくくなってしまいます。

便秘が続いていたら早めに病院へ!

子どもの便秘に気づいたとき、すぐに病院を受診しようと思う保護者は少ないと思います。

しかし子どもの場合、「便秘が2~3か月以上続くと徐々に症状がひどくなっていきます。便秘に気づいたときに、まず食事に気をつけ、生活上のいろいろな工夫をするのはとても大事なことで、それで改善すればそれにこしたことはありません。ですが、便秘が慢性的になると、腸自体が排便しにくい状態になる、つまり腸に便秘の「くせ」がついてしまい、自然にはなおりにくくなっていきます。」

うんちが出ていても、便秘の場合があるということをどうか覚えておいてください。

そして子どもの便秘が何か月も続いている、という場合には排便に詳しい小児科や小児外科をできるだけ早めに受診することが大切です。

保護者が、「何か変だな」と思って周囲の人に相談しても、「出てるなら大丈夫」と言われてしまい、治療が遅れたことで重症化してしまった例もあります。

小さな子どもの場合は、自分の体の不快感を言葉で表現するのは難しいことが多いと思います。うんちが出ているかどうかだけでなく、すっきり出ているかも気にかけてくださいね。

「日本トイレ研究所 子どものための排便相談室」では専門家によるQ&A、排便で悩む子どものための病院リスト、便秘チェックリスト等を掲載しています。

【参考】
中野美和子『赤ちゃんから始まる便秘問題―すっきりうんちしてますか?〈第3版・改訂増補〉』2020年、言叢社

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「トイレ」を通して社会をより良い方向へ変えていくことをコンセプトに活動しているNPOです。トイレから、環境、文化、教育、健康について考え、すべての人が安心しトイレを利用でき、共に暮らせる社会づくりを目指します。

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