EAファーマ株式会社とNPO法人日本トイレ研究所は、排便に関する正しい情報を伝えていくため、排便に関する啓発に取り組んでいます。
朝食後は排便のゴールデンタイム
朝食を毎朝欠かさずに食べていますか?「時間がない」「食欲がない」などの理由で食べない方もいるのではないでしょうか。
朝食に「何も食べない」および「菓子・果物などのみ」という人は、20代・30代・40代で約23%とほかの年代よりも多く、約4人に1人が朝食をきちんと食べていないという調査結果があります。(令和元年「国民健康・栄養調査」厚生労働省)
ですが、すっきりした1日を過ごすには、朝食は欠かせない大切なポイントです。
朝食後は1日のうちで最も排便しやすい、ゴールデンタイムだからです。
大腸でつくられた便が、強い波のような動きによって肛門近くの直腸に押し出されることを「大蠕動(だいぜんどう)」といい、大蠕動が起こると、排便が促されます。
人によっても異なりますが、この「大蠕動」は1日1~3回くらい起き、特に起床後の空っぽの胃に食べものが入ると、それに反射して腸が動くため、大蠕動は朝食の後に起きる人が多いといわれています。
朝食を食べることで、体内時計が目覚め、大腸をはじめとする内臓の働きなどをコントロールしている自律神経を整えることにもつながるため、良いことづくめなのです。
便秘症だと2人に1人以上が「便意」を感じていない
大蠕動によって、直腸に便が押し出されると、脳に信号が送られて「便意」を感じます。
ところが、慢性便秘症の人の場合、便意を感じていない人が57.4%と、2人に1人以上いることが調査でわかりました。(Ohkubo H, et al.: Clin Transl Gastroenterol 2020; 11(9): e00230)
便意を感じにくくなる理由や対処法について、排便の専門医である中島 淳先生(横浜市立大学大学院医学研究科 肝胆膵消化器病学教室 主任教授)は次のようにお話しされています。
中島 淳先生:大腸の出口である直腸内に便がたまると、便が直腸の壁を押すことで神経が反応して、便意を感じます。便秘症の患者さんの場合、健康な人に比べて、直腸の壁を押す力が強くないと、便意を感じにくくなっているケースがあります*1。つまり、出るはずの便が直腸にあるのに、トイレに行きたい感覚がなくなっている状態です。
2019年に日本で行われたインターネット大規模調査*2では、慢性便秘症患者の人は、便秘ではない人(対照群)に比べ、便意が消失している割合が高かったという報告もあり、慢性便秘症では便意が喪失しているケースは少なくありません。
便意がないと、いつトイレに行けばよいのかが分からず、ますます排便が難しくなります。
このような場合は、まず、決まった時間にトイレに行くという排便習慣をライフスタイルに組み込むことが重要となります。「朝食を食べたらトイレに行く時間を作りましょう」とお声がけすると「先生、出ました」という患者さんも少なくありません。
*1 Read NW, et al.: Gastroenterology 1986; 90: 53-60
*2 Ohkubo H, et al.: Clin Transl Gastroenterol 2020; 11(9): e00230
うんちが出やすくなる姿勢がある
便意を感じにくい場合に、自分でできる排便時の工夫はあるのでしょうか。
中島 淳先生:慢性便秘症の治療では、食事や運動といった生活習慣の改善を行うと同時に排便習慣を把握することもポイントとなります。先述したとおり、慢性便秘症の患者さんは便意がないケースもあります。普段、自分がどれくらいの間隔で、いつごろ排便することが多いかといった排便習慣を把握し、ある程度決まった時間にトイレに行き排便することは計画排便ともいえ、治療の一環ともなります。
生活習慣の改善で効果がなく慢性便秘症の治療薬を使用する場合でも、薬を服薬してからどの程度の時間で排便するか(効果が出るまでの時間)を把握できれば、治療の助けとなる場合があります。また排便の姿勢も重要です。理想的な排便の姿勢をご存知でしょうか?前かがみで、両ひじを太ももの上におき、背中と太ももの角度が35度になる姿勢が理想の排便姿勢です。姿勢をちょっと変えるだけで排便しやすくなるかもしれません(下図参照)。
便意のサインを逃さないで
「便意」は繊細で、少しタイミングを逃すとすぐに消えてしまいます。便意のサインは「ちょっとおなかが張る感じがする」「肛門がムズムズする」など人によって様々ですが、ちょっとしたサインを逃さずにトイレに行くことも大切です。
便秘を引き起こす原因のひとつに「便意を我慢すること」があります。「出かける前にトイレに行く時間がない」、「仕事中は忙しくてトイレに行けない」、「学校でうんちをしたくない」など、様々な理由でトイレを我慢したことがある人は多いのではないでしょうか。
しかし、我慢を繰り返すことで次第に腸の感覚が鈍くなり、便意を感じにくくなることで便秘につながるといわれています。
我慢をしないためには、家庭や学校等で、トイレに行きやすい環境づくりをすることも大切です。
日本トイレ研究所・加藤 篤:「人は2~3時間に1回はトイレに行くと思います。もちろん、トイレに行くのは排泄するためではありますが、「ちょっと息抜きを」という身体からのサインと捉えることもできます。
そういった意味で、トイレ時間を利用してリラックスすることは、とても大事だと思います。
たとえば、トイレに花を飾ることや香りをアレンジするのもよいです。やわらかな明かりの空間は人のこころをくつろがせる効果もあります。
また、ドアを開けると同時に心安らぐ音楽が流れるのはどうでしょうか。自然環境がつくる音を聞いている時は、体をリラックスさせる副交感神経反応が高まるという調査結果*3もあるようです。
我慢ではなく、つい行きたくなるようなトイレにしたいものですね。」
*3 https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2018/09/post-10918.php
(2022年10月27日アクセス)
リラックスした状態のときに働く副交感神経が腸など消化管の動きを活発にしています。朝、時間に追われているとリラックスできず、そもそも便意が起こらない可能性もあります。
朝食後はトイレに行くゆとりある時間を持てるよう、少し早起きするなどの工夫をしてみてはいかがでしょうか。
今の気持ちを表してみよう!
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