日本トイレ研究所では2020年から、自分の便の状態を知ることで、健康について考えることを目的に、啓発活動「うんちweek」を11月10日(いいトイレの日)~11月19日(世界トイレの日)に実施しています。2021年のうんちweekの一環として実施した、小学生の排便記録調査についてご紹介します。
小学生1万6,655人が排便記録に参加
公立小学校117校の児童1万6,655人に、排便記録に参加してもらった結果を「小学生の排便に関する記録調査」として発表しました。調査では、排便の有無と、便形状(後述します)について2021年11月10日~16日の7日間記録してもらいました。
7日間のうち排便が2日以下の児童、8.0%
7日間のうち、毎日排便があった児童は36.0%でした。
一方で、排便のあった日数が「2日」だったのは5.3%、「1日」が2.0%、「0日」が0.7%となり、2日以下が計8.0%となりました。小児の慢性機能性便秘症の診断基準のひとつに、「1週間に2回以下のトイレでの排便」という項目があります。排便回数だけでは便秘症と判断することはできませんが、排便が2日以下だった計8.0%は、便秘の可能性が高いと考えられます。
硬い便が7日間で2回以上の児童、14.6%
便の形状については、国際的に使用されているブリストル便形状スケールにもとづいて作成したイラストと説明を示し、記録を実施しました。子どもたちが興味を持って取り組めるよう、それぞれの便に名前をつけました。
うんちチェックシートはこちらのサイトから日付なしのものがダウンロードできます。大人も子どもも、チェックの仕方は同じですので、いまこの記事を読んでいる方も、ぜひ挑戦してみてください!
「1ころころうんち」、「2ごつごつうんち」は便秘傾向の硬い便です。1または2の硬い便が7日間のうち2回以上出た児童は、14.6%でした。性別では女子で16.3%、男子で12.9%となり、女子が男子を3.4ポイント上回りました。学年別にみると、低学年のほうが多く、学年が上がるにつれ減少する傾向にあります。
小児の慢性機能性便秘症の診断基準では「痛みを伴う、あるいは硬い便通の既往」があり、便の形も、便秘かどうかに関連していると考えられます。
入学時期は便秘になりやすいタイミング
小児慢性機能性便秘症診療ガイドラインによると、子どもが慢性便秘症になりやすいタイミングのひとつに「学童における通学の開始や学校での排泄の回避」があります。
今回の調査では、硬い便が7日間のうち2回以上出ていた児童は低学年が最も多く、1年生女子では最多の19.9%、1年生男子では16.2%となっています。
高学年になるにつれ減少傾向にありますが、一部は改善されず便秘が疑われる状態が続いていると考えられます。
子どもも大人も1年に1度はうんちチェックしよう!
子どもが自分だけでトイレに行けるようになると、保護者も子どもの日々の排便状態を確認することはほとんどなくなると思います。小学校の養護教諭からは、「うんちが出たかどうか」と腹痛を関連づけて考えていない児童もいると聞きます。
排便については他の人と比較することがないので自分の排便には疑問を感じにくく、便秘状態であっても、よほど悪化しない限り誰かに相談することは少ないと考えられます。
今後もうんちweekを通して、1年に1度、1週間の排便記録を実施することで、排便の大切さを伝え、親子で排便状態をチェックする機会にしてもらいたいと思います。
もちろん大人の方も、ぜひうんちチェックをお願いします!
今の気持ちを表してみよう!
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