特定非営利活動法人イコールネット仙台について
特定非営利活動法人イコールネット仙台では、男女共同参画をテーマに幅広い取り組みをしています。特に防災・災害復興は重要なテーマとしており、東日本大震災が発生する前から取り組んできました。1995年の阪神・淡路大震災において、女性が様々な困難を抱えたことなどを受け、2008年に「災害時における女性のニーズ調査」を実施、2011年に東日本大震災が発生して以降は、調査の結果を踏まえ、避難所における被災女性への支援を行ってきました。活動を通して、女性たちが地域防災との担い手として、リーダーシップを発揮する必要性を感じ、女性の防災リーダーの養成に取り組み、3年間で100名以上の女性防災リーダーが誕生しました。また、震災を経験した責任から、経験と記憶を後世に伝えていこうと、様々なアーカイブ事業を実施しています。
多様なニーズに対応できていない
2008年に実施した「災害時における女性のニーズ調査」からは、女性たちの不安・心配が見て取れましたが、東日本大震災ではそれらが現実になっていました。宮城県内の複数の避難所を訪れ、必要な支援につなぐ活動を通して、共通の課題がいくつか見られました。
2011年には宮城県内の女性を対象に、被災時・復興時をめぐる課題解決および被災地の女性たちの記録を目的に「東日本大震災に伴う『震災と女性』に関する調査」を実施しました。併せて、ライフスタイルの異なる40人の女性を対象に、発災からの生活について聞き取り調査も実施しました。
調査において、避難所生活に関する設問で、設備面やストレスに関する声が多くありました。避難所に入り感じた課題は、支援を必要とする人たちへ適切な支援が届いていないことでした。避難してきた人は多様で、高齢者、障害者、妊婦、子どもなど、様々なニーズがある中で、避難所を後にする人が増えていったことが、支援が行き届いていないことを物語っていました。

女性の参画は、男性の負担軽減につながる
被災女性からは、女性のリーダーがいてほしかったという意見が多くありました。避難者の半数は女性であるために、女性ならではの問題は、男性のリーダーには相談しづらく、特に健康上の問題であるとリスクが高まります。女性リーダーを配置することにより、女性が安心できる環境になることに加え、男性たちが避難所の運営で疲弊している中で、女性たちもリーダーとして責任を持って対応していれば、男性たちの負担軽減にもつながります。
復興に向けた計画を作成する場にも、女性をはじめ、多様な人の声が反映されていく必要があります。「復興計画の場に女性の参画は必要である」と回答した人の割合は85%でした。防災や災害対応は男性の分野と考えられる傾向にありますが、震災を経験し、女性たちも困難に直面し、周囲の方の困難も目の当たりにしたことで、このような困難を繰り返してはいけないという気持ちが、結果にも表れているように感じました。
女性を地域防災の担い手に
復興計画に盛り込むべき内容としては、「障がいのある人、妊産婦、病人、高齢者、子どもなどのニーズを踏まえたきめ細やかなサポート体制を整備する」が最も意見が多くありました。要配慮者のサポートは女性が実施する場合が多いため、その結果として、職を失ったり、体調を崩したりしている方がいました。個人で対応できることには限界があるため、サポート体制を社会的な形で整備する必要があります。
「女性の地域防災リーダーや災害復興アドバイザーを育成し、地域に住む人々の支援体制を実効性あるものにする」という意見にも注目しました。震災が発生した時間帯は、多くの男性が仕事へ行っており、子育てや介護で地域に残っていた女性たちは地域を守る役割を担う必要がありました。地域の防災を担うリーダーシップを発揮できる女性たちの育成を求める声が調査の結果から読み取れました。
他には「女性の視点に配慮した避難所運営マニュアルをつくる」「避難所や仮設住宅の運営に女性の参画が必要であることをマニュアル化する」といった意見もありました。マニュアルが必ずしも有効というわけではないですが、マニュアルがあることにより、女性が避難所運営や復興に向けた話し合いの場に参画しやすくなることが考えられます。

地域防災を担う女性の防災リーダーの養成
特定非営利活動法人イコールネット仙台では、地域防災を担う女性の防災リーダーの養成に取り組み、3年間で100名を超える女性の防災リーダーが誕生しました。この講座は、全5回の講座で全回欠席を認めないこと、受講後は地域で実践することを条件としています。現在では、受講した女性たちがネットワークを組み、それぞれの地域の中で防災活動を展開しています。
「地域の防災力を高める」をキーワードとし、その軸となるのが「人権と多様性への配慮」です。多様な人々が地域に暮らしており、それぞれに配慮した形で防災活動を進めることを推奨・提案しています。地域によって、地形、災害の種類、人口構成など様々な要因が異なるため、地域サイズの防災計画を作成すること、その進行役に女性防災リーダーがなってほしいという提案をしています。
防災訓練の見直しも提案しました。震災前は火災訓練や炊き出し訓練が一般的に行われていましたが、震災以降は、避難所の運営訓練が盛んに行われるようになりました。感染対策を踏まえた防災訓練も実施され、その中にトイレの運用訓練を盛り込んでいくことを提案したいと考えています。地域の住民を対象とした防災力アップ講座も提案をしており、すでに女性防災リーダーは自分の地域において、ハザードマップを踏まえたマイタイムライン講座や災害食づくりなど男性たちを巻き込んだ講座を盛んに実施しています。
多様な人に配慮し、皆で考えることが重要
中でも避難所をつくるワークショップに力を入れて取り組んでいます。避難所の設計図をつくるワークショップであり、震災以降から様々な地域で様々な方を対象に実施してきました。避難所となる施設を借りる場合や、公共施設で行う場合もあり、対象も女性のみならず男性も対象にしています。小中学生を対象にした机上での設計図づくりも実施しており、地域にはどのような人たちがいて、どのような支援が必要なのか、子どもたちも真剣に考えながらワークショップに取り組んでいます。次世代の防災意識を育成していくうえで有効な取組であると考えています。

ワークショップの一環で、避難所のトイレ問題を考えるワークショップも行ってきました。避難所に備蓄されている組立式の仮設トイレを組み立てたりすることにより、事前に経験しておくことの重要性を感じてもらいました。他には、トイレ空間にはどのような物資が必要かを考えながら、トイレ空間をつくるワークショップも実施しています。高齢者や妊婦など配慮が必要な人々の利用を想定し、話し合いながら作っていくことで問題意識も生まれていくため、この過程が重要であると考えています。ワークショップ後には課題を整理し、それを共有しながら、取り組んでいくことが効果的です。
※以上の内容は、2021年11月16日に開催した「防災トイレフォーラム2021-トイレから考える自助・共助・公助の連携-」で、ご講演いただいたものです。
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