病気や障害はさまざまな種類があり、外見から分かりやすいものもあれば、一目見ただけでは健康な状態と変わりないといったものもあります。人工肛門、人工膀胱もその中の1つと言え、この人工肛門や人工膀胱を造設した方々をオストメイトと呼びます。現在、日本には、約20万人近くのオストメイトがいると言われています。
見た目は健常者と変わらない障害者
バリアフリーのトイレは主に障害者が使用します。そのため健常者が使っていると、違和感を覚えるのが一般的かもしれません。そのような視点で考えた場合に、見た目が健常者とあまり変わらないオストメイトが、バリアフリートイレを使うことをどのように考えるべきでしょうか。
オストメイトとは、直腸がんや膀胱がん、クローン病、潰瘍性大腸炎などの疾患が原因で、「ストーマ」という人工の肛門や膀胱を造設した方々のことを言いますが、このストーマは、腸や尿管を腹壁から外に出し繋げたものであり筋肉ではありません。そのため、排泄のコントロールが難しく、オストメイトは「パウチ袋(ストーマ装具とも言う)」と呼ばれる医療用の装具をお腹に貼り、そこに便や尿を貯めます。そして、定期的にトイレで溜まった便や尿を処理しています。
このように排泄に関わる障害を持つオストメイトにとって、トイレはとても重要な施設であり、他の障害者同様に、バリアフリートイレを頻回に利用することがお分かりいただけると思います。そして、現在では、オストメイト向けの設備として「汚物流し台」がバリアフリートイレ内に設置され(画像1)、加えて、オストメイト向けの設備が設置されているトイレには、「オストメイトマーク」が掲示されています(画像2)。皆様はお気づきだったでしょうか。
さて、先ほど述べました通り、見た目は健常者とほぼ変わりなく見えるオストメイトですが、バリアフリートイレを利用する際に「なぜ健康な人が使っているんだ!」と配慮のない言葉を掛けられることも少なくありません。
これはオストメイトの社会的認知度やオストメイト向けトイレの在り方にも関連したものになりますが、まずはより多くの方々にオストメイトを知っていただくことが重要ではないかとも考えています。そして、オストメイトの認知度の向上とオストメイト向けの設備がバリアフリートイレに設置されていることが知られることで、より安心なバリアフリー環境に繋がるのではないかと考えております。
オストメイトの抱える悩みをITを使って解決できないか?
オストメイトは日々の生活の中で、排泄に関する不安を抱えています。そして、外出する際には、特にその不安は大きなものとなります。臭いや音漏れはもちろん、外出先で、パウチに溜まった便や尿の処理を行う必要も出てきます。(画像3)
そして、そのような場合に重要なのは、トイレの場所と設備です。現在、オストメイトのためのトイレ設備である「汚物流し台」がバリアフリートイレに設置されているわけですが、その情報がスマホですぐにわかれば、より安心して外出できるのではないかと考えております。
このような目的から、開発を行ったのがオストメイト向けスマートフォンアプリ「オストメイトなび」となります。
オストメイト対応トイレの検索機能から始まった「オストメイトなび」
「オストメイトなび」とは、地図上でオストメイト対応トイレを検索できるスマートフォンアプリです。現在、iOS端末、Android端末、各種タブレット端末などで無料で利用が可能です。(画像4)
トイレのアイコンには5種類あり、設備の充実度で色や形を変えています。施設の詳細ページでは、汚物流し台のシャワー設備や荷物置き場など、詳しいトイレの情報を確認できます。また、「ここへ行く」ボタンをタップすると、グーグルマップによるナビゲーションが行われます。この機能によって、オストメイトが安心して外出できる環境整備に貢献しています。
そして現在では、パウチなどの医療用装具を扱う販売店やストーマの専門外来が設置されている医療機関、全国の自治体の障害者給付情報(オストメイト向け)が検索できるようになっています。詳しくは特定非営利活動法人エムアクトのブログ(リンク:アプリ「オストメイトなび」の使いかた)をご覧ください。
さて、エムアクトでは、このようにITを活用して、内部障害者であるオストメイトの生活の質向上に貢献しています。そのほか、YouTubeチャンネル「オスとぴ!」(画像4)やblog「オスとぴ!」(画像5)にて、オストメイトのお役立ち情報も発信をしています。
オストメイトは、一見すると健常者と変わらないように映りますが、本当は大きな病気がきっかけで排泄障害を抱えている方々です。より多くの皆様のご理解により、オストメイトにとっても安心な環境へと繋がります。まずはバリアフリートイレに掲げてある「オストメイトマーク」について、「このマーク何か知ってる?」とお友達に教えてあげてください。一歩一歩、より良い世の中になっていけばと活動をしながら感じています。
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